ライフ

ハラスメント被害男性の苦悩 「男らしさの罠」にはまる例が少なくない

「男らしさの罠」に苦悩する男性は少なくない(イメージ)

「男らしさの罠」に苦悩する男性は少なくない(イメージ)

 古い考え方から自由になってきたといわれるが、いまだに人々はステレオタイプな「男らしさ」に縛られている。これは、ハラスメントが起きたときに被害者が男性だった場合、顕著な歪みとなってあらわれることがある。男らしさの罠にはまり、被害から救済されずにいる男性たちについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 男性がセクハラやパワハラの被害に遭ったとき、それを訴えるのはまだ難しい。たとえ、被害を申し出たとしても、その男性にも落ち度があったのだろうなどと「どっちもどっち」と理由になっていない理由で解決に取り組んでもらえないことや、時には笑われることも珍しくない。

 都内の広告代理店勤務・野原晃史さん(仮名・30代)は、小学生の頃から体毛の濃さが悩みだった。胸や腹などはもちろん、脚や腕など、服装によっては露出する部分の体毛が多く、友達からは「小中高大、全て揶揄された」と話す。

「女性に体毛が濃い、なんて言うと一発アウトだと思うんですよ。ところが、それが男性なら問題にならないと思われている。同僚や後輩から、体毛について濃すぎる、気持ち悪い、雪男と言われますが、笑ってやり過ごしている。いや、やり過ごすしかない」(野原さん)

 野原さんの記憶に強く残っている「事件」がある。十年以上前、東北地方のある祭りのポスターが「女性客へのセクハラにあたるおそれ」があると公共交通機関での掲示を拒否された件だ。全国ニュースで報じられたときに見たその祭りのポスターには、体毛の濃いふんどし姿の男性が雄叫びをあげているような様子の写真が大きく使われていた。何百年も続いていると言われる祭りの雰囲気をよくあらわしたポスターだと感じたが、伝統文化をないがしろにするのかという声もさほど大きくならず、掲示拒否に対する反発は目立たなかった。

「ありのままの自分でいよう、なんて言われるじゃないですか。ポスターの男性もありのままだったのに、それは気持ち悪いし怖い、と言われてしまう。男性差別だ、という声が出るに違いないと思っていたのに、そう言う人はほとんどおらず、メディアも『苦情があったポスター』と紹介するだけ。歪すぎますよ」(野原さん)

 数年前、Yシャツだけになる春や夏を前に、野原さんは腕の体毛を脱毛したが、ツルツルになった腕を見た男性同僚からは「気にしすぎ」とか「余計に気持ち悪い」と笑われた。そのときも野原さんは笑っているだけだったが、いつも同僚が立ち話をしているだけで「自分の体毛のことを言われているのではないか」と、内心では気が気でないのである。毛の濃さにこだわる人も、ツルツルにしたことを笑う人も、普通と言われる「男らしさ」のあり方にとらわれて、野原さんらしさを否定する。そして、野原さん自身も周囲の目が気になって自分らしさを受け入れられず苦しんでいる。

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン