ヤクザ“家計”までも研究する鈴木智彦氏
溝口:刑務所といえば、よくヤクザは二通りしかないと言います。自分の命をかけて喧嘩で刑務所に行くか、お金を運んでいい子になるか。
つまり金を稼ぐ才能がないやつは、命をかけて、ヒットマンになるわけですよね。その伝統はまだ生きている。例えば、六代目山口組若頭の髙山清司は、「喧嘩できないで何でヤクザだ、刑務所に行かないで何でヤクザだ」と言う。「刑務所に行ってくれる組員がいるから、われわれはうまい飯を食えるんだぞ」と、そういう言い方をする。
このことによって、その組の暴力イメージというか、怖いイメージが高まるからです。
鈴木:暴力があるからこそ、シノギができる。怖いからヤクザに金を払う。
【プロフィール】
溝口敦(みぞぐち・あつし)/ジャーナリスト。1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』など。
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/フリーライター。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。
※週刊ポスト2021年4月16・23日号
懲役の必要性にも詳しい溝口氏