監視の目は年々厳しくなっているが…(山口組総本部への家宅捜索。時事通信フォト)
鈴木:先日、ある暴力団の葬儀があって、山口組は中核団体である弘道会以下3団体が来ていました。それぞれ別に香典を出したはずで、最低でも合計1000万~2000万円の香典を払ったと考えていい。
溝口:ヤクザには、デモンストレーションとしての金払いという側面がある。稲川会初代会長だった稲川聖城が、散髪のチップが100万円だったと。理由を聞かれたら、「どうせやるなら目立ったほうがいいから」と言っていたと。これこそが顕示的消費です。
鈴木:実際、熱海(稲川会発祥の地)で稲川会を悪く言う人はいなかった。金の切り方が半端ではない。土地に根付くから、地元は大事にします。
溝口:裏でみかじめ料をたっぷりとっているくせに、使うときにはそういうふうに使う(笑)。会食費も一昔前までは一晩50万円で月1000万円を平気で超える。今でも一部にはそういう金遣いをするヤクザがいる。
鈴木:ヤクザの選ぶ店は特別待遇をしてくれるので、べらぼうに勘定が高い。和食で1人7万円なんてすぐ超えます。
溝口:ヤクザの会食は「官僚接待」など目ではありません(笑)。
【プロフィール】
溝口敦(みぞぐち・あつし)/ジャーナリスト。1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』など。
鈴木智彦(すずき・ともひこフリーライター/フリーライター。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。
※週刊ポスト2021年4月16・23日号
ヤクザ社会の金銭感覚をよく知る溝口氏