春吾が落語家時代に書いた新作落語のいくつかは、立川流の若手に受け継がれている。『明晰夢』は立川吉笑が大事なネタとして演じ続けているし、立川志の春が『海のはしご』を演じるのを観たこともある。実在のナツノカモは2020年に落語作家として量産体制に入ったというから、これから新たな“ナツノカモ落語”を聴く機会も増えるだろう。ナツノカモ自身が舞台に立つ立体モノガタリもぜひ観てみたいものだ。
ウエブ連載『着物を脱いだ渡り鳥』は自主制作で書籍化され、ナツノカモのホームページ「Shop」で購入可。一種の“落語論”としても読み応えがある名著であり、「落語とは何か」を改めて深く考えさせられた。『明晰夢』『海のはしご』の台本も掲載されている。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。
※週刊ポスト2021年4月16・23日号