民放各局が運営するアナウンススクールの中で、最も長い歴史を持つのが「テレビ朝日アスク」だ。1999年の設立以来、キー局・地方局を含めて全国に1000人以上のアナウンサーを輩出してきた。その教壇には、テレビ朝日の現役アナウンサーも立つ。『報道ステーション』のMCを担当している森川夕貴アナの講義に潜入取材した。
「あおあおあお……」
教室の外まではっきりと聞こえてくる、活気のある発声練習。生徒たちは授業が始まる30分以上も前から集まり、個々に口を動かしている。この日は発音や滑舌、アクセントを中心とした授業内容だったが、聞けば、授業前の自主練習は普段から習慣となっているという。この授業の生徒は11名中9名が女子大生。講師の森川夕貴アナが教室へ入ると、途端に空気が引き締まった。
新人アナと同じ教科書
教材にはテレビ朝日の新人アナウンサーが入社直後の研修で使う教本と同じものが使われている。ひとりずつ順番で声に出して読み上げ、講師からチェックを受ける。
「ら行が苦手だったら毎日2分間、“らら、りり…、ろりょ、ろりょ…”と練習を続けていくと、舌が覚えて滑らかになりますよ」
森川アナは練習法を提示しながら、口の開き方や舌の使い方、発声時の姿勢に至るまで、身振り手振りを交えて細やかに指導する。その様子を教室全体が熱心に聞き入っている。
「舌はもっと上あごに近いほうへ寄せて、そう、舌先を上あごに付けて弾く感じです。あっ、いいね! 今まででいちばんきれいに発音できています! 自分の感覚としてはどうですか」