イヤミスを書こうとしたらぜんぜん怖くならなかった
弁護士という仕事に憧れてめざしたわけではなくても、仕事を通して尊敬できる先輩弁護士に出会えたという。
「弁護士の仕事っていうのは、弱い人を助けることじゃないんですよね。弱い人も強い人も等しく法の保護の下に権利を持っている。たとえば自分は弱くて相手は強いと思っていても、相手も同じことを思ってたりするのが現実です。現実にははっきり線が引けません。そういうところが面白いし、弁護士の仕事のしどころなんだと私は思っています」
麗子のようにはっきりものを言えないという新川さんだが、「能天気なぐらいネアカで前向き」なところは共通しているそうだ。
「デビュー前にイヤミスを書こうとしたこともあるんですけど、ぜんぜん怖くならなくて。あれは特殊技能ですね。でもいつかは書けるようになりたいです」
デビュー作の大ヒットで、他社からも執筆依頼が次々と来ているそうだ。『元彼の遺言状』の続篇はすでに書き終え、秋ごろの刊行をめざして手直しをしている段階だ。
「次回作には、新しいキャラクターも出てきますし、弁護士ってふだん何してるの?というところも描かれると思います。読者が好奇心を持って追いかけて読むものはミステリーだと私は広くとらえているので、これからは弁護士もの以外でも、いろんな作品を書いてみたいですね」
【プロフィール】
新川帆立(しんかわ・ほたて)/1991年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。現在は東京都在住。東京大学法学部卒業後、弁護士に。第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、本作でデビュー。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2021年4月29日号