ファームでは馬と触れ合うこともできる。ホースセラピー効果も。
「牧場経営するなんて、これまでの人生でもちろん考えていなかったけれど、なんとかならないかと従業員の相談を受けるうちに、もう私がやるしかない!と背中を押される気持ちで決断できました」
世の中はコロナ禍だったにもかかわらず、やるからには本気で向き合おうと昨年8月には那須へ移住。行政とのやりとりや、荒れた土地の修復など自ら駆けまわった。そして、従業員10名と馬たち19頭はそのまま残れることになった。
「ここにいるのは、高齢やケガで活躍できなくなってしまった元競走馬や元競技馬。そんな子たちが余生をゆったり過ごせるように、厩舎を増やしてもっと受け入れられるように計画してます」
一次産業に興味はあったが、経営について学んだことがなかったので、経営者の両親に教えてもらったり、経営の本を読んで勉強したという。ファームの最高齢従業員は74才の男性。芸能人としての紗栄子の活動をよく知る世代ではないかもしれないが、「『若くて元気のいい子が何かがんばってるな』って、あたたかい目で迎え入れて助けてくれています。ファームの仕事については、みんなと一緒に早朝から夕方まで体を動かして覚えていきました。
とにかく知らないことばかりで。ビニールハウスとか芝生の種の値段とか、畑へ引く水道管の修理費もすごく高いとか。『ポンプは中古でいいからもっと安いのないかな』なんて探したり。この前からベテランスタッフに『トラクター買って』とせがまれているんですが、車と同じくらいするんですよ!(笑い)」
那須ファームヴィレッジへの入場は無料。広大な敷地の整備、管理だけでも莫大な費用がかかっているはず、と訪れてみればすぐわかるが、収入源はホーストレッキングや馬との触れ合い体験、トラクターツアー、レストランと週末だけオープンするカフェ、オリジナルグッズの販売。あとは芸能活動の収益から補填しているという。
「地元の方にも気軽に来ていただきたいので、入場料はいただかずになんとかがんばっています。東京や遠方から来てくださる方も、ファームの自然や馬たちに触れて癒されたと言ってくださるのがうれしい。今は私が“客寄せパンダ”と言われても皆さんにまずはファームの魅力を知っていただいて、そしていずれはファームが自走していけるようになるのが目標です」
元競走馬や元競技場が余生を過ごしながら、再活躍できる場ともなっている。
昨年のリニューアルオープン後、冬へ向かって自粛ムードが高まり来場者が減ってしまったこともあったが、「スタッフと『このままじゃまずいよ!』と知恵をしぼってオリジナルグッズを開発。来られない方たちにもファームの風を届けられるように、とECを始めました」
紗栄子自ら生産者のところへ足を運び、選び抜いた商品はデザインや発送もできる限り外注せずに自分達で行い、極力コストカット。「いいと思う気になる物があったら、生産者を調べて『紗栄子と申します』って自分で電話して確認したりします。製造場所まで直接見に行くので『ほんとに来たの!?』ってよく言われるんですよ(笑い)」