芸能

田中健 いきなり殴られても何もしない、それが「オメダ」だった

田中健が「オメダ」を演じた思い出について語る

田中健が「オメダ」を演じた思い出について語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏による、週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、テレビドラマ『俺たちの旅』で主演グループの一人「オメダ」を演じた思い出について語った言葉を紹介する。

 * * *
 田中健は一九七五年にテレビドラマ『俺たちの旅』(日本テレビ)で中村雅俊、秋野太作とともに主演グループの一人を演じ、人気を博す。

「実は『俺たちの旅』の途中くらいまでは俳優をやめたかったんです。現場は楽しいのですが、キャメラの前に立つのがつらくて。あまりに演技ができない。どうやっていいかも分からない。

 ずっと『本番が唯一の練習』みたいにやってきたもので、役作りの仕方も、役の捉え方も、セリフの背景の考え方も、なにも分からないんです。だからスタッフになりたかった。現場でみんなで物を作ること自体は楽しかったので。

 でも、人気が凄く出てきたんです。『俺たちの旅』のロケ現場には千人くらいギャラリーが来ていましたから。そうなってくると、やはり考えるんです。やっていけるんじゃないかと。

 それでも相変わらずキャメラの前に立つのは嫌なわけです。芝居が怖いというのは、それからもずっとありました。

『俺たちの旅』は二十四歳から二十五歳までやりました。二十五になった時に、ある先輩から『三十までに自分の意思で決めないと、遅いぞ』と言われまして。他に選ぶ道もなかったので、『よし、役者で行こう』と決めました。自分で決めたらしょうがない、ということで、そこからは迷わなくなりましたね」

 自信なさげな当時の田中の様子は、『俺たちの旅』で演じた「オメダ」のキャラクターが重なってくるようでもある。

「まさしくそうでした。ですから、今みるとそれなりにいい芝居をしてるんです。全然芝居をしていないから。

 現場では秋野さんが芝居を動かしていました。凄く様子を見ながらやる人なんです。

 たとえば、本番で僕がぼうっと芝居していると、アドリブでいきなりバーンと殴ってくる。今なら『先輩、何するんですか!』とか対応できるかもしれないですが、当時は何もできなくて止まってしまう。

 でも、それがオメダなんです。そこで止まるのがオメダ。芝居じゃなくて、自分そのままをやっていたんです。

 あそこでちゃんと返していたら、あのオメダの純粋さは出なかったかもしれません。そこまで秋野さんが理解してやっていたのかは分かりませんが──」

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン