昔の日本は、大学受験や就活に失敗したらそこで人生が終わりという硬直的な社会でしたが、今は転職が当たり前になりました。そもそも働いた経験もないのに、大学4年生の時に自分に何が向いているかなどわかるはずがありません。たとえ就活に成功しても、そこで自分がやりたいことができるなんて、宝くじに当たるような話です。20代のあいだならいくらでも転職できるようになったのですから、優秀な若者が「3年で辞める」のは当然です。社会に出て働く経験は大事ですが、たまたま入った会社に滅私奉公する必要はまったくありません。就職は一生に一度の機会ではなく、トライ・アンド・エラーで適職を見つけていく時代になりました。自分に向いていないとわかったら、新しい機会にチャレンジするべきです。

生涯現役時代の「格差」の正体

 新学期を迎えた中学生や高校生について言えば、確かにリモート授業などで学びの格差が生じるかもしれません。でも根本的な問題は、これまでの学校教育がDXの時代に適応できなくなっていること。そもそも同じ年代の子どもを一つの施設に入れて画一的に教育する公教育は、軍隊をモデルに、産業革命の時に工場労働者を訓育するために作ったシステムで、ポスト産業社会に同じことをする理由はありません。いじめが大きな社会問題になっていますが、それでもまったく解決できないのは、学校という異常な閉鎖空間が問題の根源だからです。学校をなくせば、いじめもなくなるでしょう。

 現代は、誰もが自由に生きて、自己実現できるとされる時代です。前近代の身分制社会では、百姓の家に生まれたら親の職業を継ぐしかなく、結婚相手も親が決めていました。しかし今は人類史上ありえないくらい豊かで平和な時代になり、「ものごころついたあとは、自分の人生は自分で決めるべき」という考え方が主流になった。1960年代のアメリカで、ヒッピー(フラワーチルドレン)たちによって「自分らしく生きる」という価値観の大転換が起こり、それがまたたく間に世界じゅうに広がっていった。これを私は「リベラル化の潮流」と呼んでいます。

 しかしそうなると、「自分らしく生きるってどうすればいいの?」という新しい悩みが生まれてくる。身分制社会では人生の選択肢を考える余地はありませんが、いまは多すぎる選択肢の中でどうすればいいかわからなくなっている。際限のない自由に溺れてしまい、生きづらさを抱える若い人が多くなっています。

「どう生きればいいのか」の悩みをさらにやっかいなものにするのが長寿化です。医療経済学者の永田宏氏は、1987年生まれの男性の25%が101歳、女性の25%が107歳まで生きると予測しています。60歳で定年退職すると、その後の人生が半世紀もあるというSF的な未来がもうすぐやってくる。このような超高齢社会では、できるだけ長く働いて老後を短くする「生涯現役」戦略以外ありません。

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