だからこそ、若い人たちには、つねに自分の専門性を意識しておくことをアドバイスしたいと思います。これから若者の市場価値は上がる一方なのですから、一芸を持っていれば大きなチャンスを手にすることもできるでしょう。ただし逆に言うと、遅くとも30代半ばくらいまでには自分の道を決め、ある程度の評判とネットワークをつくっておかないと、その後の人生がつらくなります。
確実に来る未来を考えれば、会社という伽藍の世界に閉じ込められ、好きでも得意でもない仕事をやり続けるのは最悪です。適性はすぐにわからないので、半年や1年頑張ってみるのは必要かもしれませんが、自分の強みを確立するには、人的資本を分散投資するのではなく、1つの専門性にすべての時間を投入すべきです。同じ分野には、人生のすべてを賭けてその仕事をしているライバルがたくさんいるのですから。これが「生涯現役社会」を生き延びるたったひとつの方法だと思います。
【プロフィール】たちばな・あきら/1959年生まれ。作家。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。『上級国民/下級国民』、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』など著書多数。