高校時代から参考にしてきた楽天・浅村栄斗

 スターになる選手は、こういう運や巡り合わせを持っている。プレーだけでなく、人との出会いや進路の選択。いずれも運命的で、何か一つでもタイミングがズレていれば、まったく違う野球人生になっていただろう。

 井口がそうだった。ただ単に24本のホームランを積み重ねただけでなく、注目される場面で打席が回り、そこで結果を残すことでスター街道を歩んできた。

 青学大の枠に収まらず大学JAPANや五輪代表にも常に選ばれていたが、大学4年時にアトランタ五輪開催という巡り合わせの良さもあって、大学時代から多くのファンに名前を知られることになった。また、スピードを備えた大型遊撃手という当時の野球界のニーズにもマッチしていた。

元青学大野球部で東都大学リーグのホームラン記録を持つ井口資仁・現ロッテ監督(時事通信フォト)

元青学大野球部で東都大学リーグのホームラン記録も持つ井口資仁・現ロッテ監督(時事通信フォト)

 安藤は自身が青学大に入学した1年生の年、井口を主将とするチームがリーグ優勝を果たし、全日本大学選手権で日本一を勝ち取る姿を間近で見てきた。井口の攻守走におけるケタ違いの能力や、チームをまとめるリーダーシップは今も目に焼きついている。

 それでもあえて「佐々木には、“井口2世”になってほしくない」と言う。

「もちろん井口さんは母校の誇りだし、井口さんの他にも小久保さん(裕紀=現ソフトバンクヘッドコーチ)や、若い世代では吉田正尚(オリックス)と、プロで活躍したOBと比較され、本人の中にもそれを目指さなくてはいけないという気持ちもあると思います。

 それでも私は、佐々木には“佐々木泰”という彼自身の選手像を作り上げてほしい。それだけの可能性を持った選手ですから」

 ちなみに、そんな安藤の思いを知ってか知らずか、佐々木は好きなプロ野球選手を聞かれると、浅村栄斗(楽天)の名前を挙げる。

「懐が深くて、長打が打てるのに確実性もある。高校時代から、いつもテレビで見ては参考にしてきました。技術だけでなく、打席での雰囲気が凄いですよね。ああいう打者になりたい」

「打席での雰囲気もすごい」と佐々木が憧れる楽天・浅村栄斗選手(時事通信フォト)

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