「いまは“LOVE”だけじゃなく“頑張ろう”と歌いたい」
世良:ぼくもこの1年、多くの議員さんや官公庁のかたにお会いして、話をさせてもらいました。いままた緊急事態宣言が出て、苦しい状況が続く飲食店には支援金が給付されます。でも、どれほど大きな会場で予定されていたコンサートでさえ、何の補償も支援もありませんよね。ぼくは、食もエンターテインメントも国を彩る大切な文化だと思っているんです。それをわかっていらっしゃらないかたが日本には多すぎますよね。
山田:そんな中、海外ではマスクなしや、ソーシャルディスタンスもとらずに5000人規模のライブを実験的に行った国もありますよね? 2週間後、陽性者は数人で、その会場で感染したわけでもなかったと。
世良:本来なら、1席空けるのと満杯でやるのとでは、3週間後、どれくらい感染者が増えるのかとか、会場の空調や天井の高さなどによって、どう異なるのかなど国が検証すべき。でも対策は会場や劇場任せ。その対策にも多額のお金がかかっていることは、あまりアナウンスされません。
山田:今日のコンサートには途中で“換気タイム”が設けられていましたね。そして、その時間を“衣装替え”の時間になさっていました。大変な中でも、お客さんたちに対して、世良サンたちが、ニューノーマルを前向きに捉える言動を随所でしてくださっているのが伝わってきました。やっぱり、生って、いいですよね?
世良:瞬間を共有できますからね。配信ライブやSNSでの共感とはまったく異なります。たとえばぼくが失敗したり歌詞を間違えたりしたとき、お客さんが「あ、いま、間違えた」「ごまかした」「いつもと違うフレーズを弾いたな」と、その場でリアクションすることや、歌や演奏に感動してくださって心が躍動することって、本当に大切だと思うんですよね。
そうした機会が奪われると、人の心は、どんどん硬くなってしまって不自由になってしまうんです。カチカチになった心をそのままにしておくと、こぢんまりしていって、やがてボロボロになって崩れ去るんですよね。
山田:私、今回のコンサートで、もっとも心が柔らかになったのが、ゲスト・アーティストのトミコ・クレアさんと世良サンがデュエットされた『白い色は恋人の色』だったんです。アコースティックギターの優しい音色に最初は涙が浮かんでしまったんですが、その後は一緒に歌ってしまっていました(笑い)。リハーサルで世良サンはさかんに、ご自分の声質に、ベッツィ&クリスの歌は合わないし、トミコさんとのデュエットにも恐縮されているようでしたが、本当に本当に、すっごく素敵でした!
世良:それは、よかった! 山田サンの心を少しでも柔らかくできたっていうことですね。
山田:さらに、ツイスト時代の大ヒット曲のときには、私と同年代のお客様は自然と体が動いてしまう。
世良:それも生ならでは、ですよね。ぼくにいま、何ができるだろう、何をすべきなんだろうと考えたとき、真っ先に思うのが、皆さんの心をなんとか自由に柔らかくできるように精一杯、活動することなのではないかと。そして、新しいシステムを導入しながら、一人ひとりのスタッフの“モノづくり”の心を継承していくこと。それを精一杯やりたいんです。