五味:そもそも「自由になりたい」と思う時点で、自由じゃないと思うんだよね。「幸せになりたい」というのも同じ。前提として不幸だってことだよ。そういう人に限って、何かを手に入れても、現状に満足できなかったりするものだから。
室井:確かに、そうかも。
五味:俺は幸せになろうって思ったことがないです。生まれつき幸せだから。それ以上でも、それ以下でもない。
室井:生まれつき幸せ! 頑張りすぎずに、肩の力を抜いて気楽に生きるのがよさそうですね。
五味:うん、大人も子供も、今日がよければそれでいいんだよ。いい時代が来ればいいのに、なんてため息をついたところで意味がなくて、それよりもおいしいご飯を食べていた方がいい。そうやって幸せな人が半分以上いれば、幸せな社会になるじゃない。みんなもっと適当でいいと思うよ。
【プロフィール】
五味太郎(ごみ・たろう)/絵本作家。1945年東京都生まれ。1973年に『みち』を刊行し、以降発表した作品は400以上。世界25か国以上で翻訳・出版されている。『たべたの だあれ』『きんぎょが にげた』『みんな うんち』など著書多数。3月に最新刊『まだまだ まだまだ』が発売され大反響。
◇『まだまだ まだまだ』(偕成社作・絵/五味太郎) 「よーい、どん!」で始まったかけっこ。みんなが無事にゴールしたと思ったら、ひとりが「ぼくはまだまだおわりません!」とかけっこを続ける。町のなかやビルのあいだ、畑の中や森のなか、まだまだ、まだまだ、続いていく……。
室井滋(むろい・しげる)/女優。富山県生まれ。早稲田大学在学中に1981年『風の歌を聴け』でデビュー。多くの映画賞を受賞。『ファインディング・ドリー』などで声優も務める。著書多数。最新刊はエッセイ集『ヤットコスットコ女旅』、絵本『しげちゃんの はつこい』。
◇『会いたくて会いたくて』(小学館・作/室井滋 絵/長谷川義史)
ボクは老人ホームにいる大好きなおばあちゃんが大好き。ママに「いまは行っちゃダメ」といわれるも、こっそり一人で会いに行くと……。「でもね、会えない分、思いは強くなるんだよ」――相手を大切に思うほど会えないいま、おばあちゃんとボクの、糸電話を使った会話が胸に沁みる。
構成/戸田梨恵 撮影/黒石あみ
※女性セブン2021年5月20・28日号