作/室井滋さん 絵/長谷川義史『会いたくて会いたくて』
五味:修理してくれたの?
室井:ううん。使っていない新品同然のバッグがあるからって、もらったんです。全然気に入ったデザインじゃないのに(笑い)。今もありがたく使ってます。
五味:そういうのってよくある話だね(笑い)。人生は運だから、大事にしていたものが盗まれて、いい方向に転がることもあれば、残念な結果に終わることもある。でもそのバッグは、運命が室井さんに与えてくれたもの。絵本のネタにもなるよ。
室井:バッグが?
五味:バッグを男にすり替えて考えてみればいい。いつか捨てたいと思っていた男がいたとする。で、ようやく捨てることができるとよろこんでいたら‥‥。
室井:もっとひどい男が現れた、ってオチですか(笑い)。
話していると楽しくなってきたので告白しちゃうと、私、トイレに五味さんのカレンダーを飾っています。ポップなイラストやユーモアあふれる言葉に、見ているだけですごく自由になった気分になるんです。
五味:それはまずいよ。自由ってなるものじゃなく、もともとあるものだから。
室井:まずいですか? 五味さんみたいに自由に生きたいって人、今のご時世にはたくさんいると思いますけど……。
五味:自由ってつらいよ。羽が生えて自由になったらどうするの? 次に何をするのか、常に考えなきゃいけないよ。やめた方がいいって。
室井:確かに、自分の頭で考えなきゃいけないし、責任も伴いますもんね。