演じる5人それぞれが、個々のキャラクターにとっての“自分の物語”を展開させられる次元にある俳優だからこそ、視聴者は各々が思う登場人物に共感することができ、群像劇が成立しているのだと思う。筆者も毎話、自分事、あるいは自分の周囲にいる人たちの物語としてテレビに釘付けになっている。そんな中でも、多情多感な性質を持つ主人公・春斗を演じる菅田の存在に惹きつけられる。
菅田が演じる春斗は、決して特別な存在ではない。お笑いと接点の無い人にとっては特殊な立場にある存在だと感じるかもしれない。しかし、夢を追いかけたり、何かに悩んだり、時に感情的になる姿は多くの人が経験することであるはず。彼はよく笑い、よく怒る、どこにでもいるごく平凡な若者なのだ。
春斗は誰に対してもすぐに感情的になるが、特に第2話のマクベス結成秘話にまつわる小さな秘密を“隠し事”だと捉え、潤平に激昂するシーンはインパクト大だった。高校の文化祭で春斗と潤平がコントをしたことがマクベスの始まりだが、潤平は春斗に声をかける前に、別の人たちを誘っていたというのである。10年も前の些細なことであり、傍目にはどうでもいいことのようにも思えるが、彼にとっては重大な事実だ。菅田は突沸する怒りを、耳を塞ぎたくなるほど声を張り上げて表現した。春斗の切実な思いを声の調子だけで示すのと同時に、2話目にして彼の性格を完全に視聴者に印象づけることに成功したと思う。
菅田は春斗の“平凡さ”や“人間臭い”一面を、とても巧みに表現している。喜怒哀楽が豊かな人間臭さは春斗の持ち味であり、ここにいかに深みを持たせられるかどうかで、彼の“どこにでもいる若者像”のリアリティは変わってくるはずだ。キャラクターに真実味が欠如していれば、視聴者の共感を呼ぶことは難しいだろう。日常の些細なことに対する感情を繊細に表現した人間臭い菅田の演技があるからこそ、視聴者が「自分のこと」として共感できるのではないだろうか。
【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。