交通機関の発達で「都心志向」に
もう一つ顕著な現象を紹介しよう。2003年の7校の東大合格者数は次の通り。西25、八王子東13、国立9、日比谷5、戸山5、青山2、立川2。それが2021年は日比谷63、西20、国立19、戸山13、青山6、八王子東3、立川2と、日比谷が突出したと同時に中心部に比重が移っていることが読み取れる。
これは「学区撤廃」した県でよく見られる現象で、自由に学校選択できるようになると都心志向になる。神奈川県の横浜翠嵐、埼玉県の浦和などもまさに同様な現象である。
東大合格者数を大きく伸ばしている都立日比谷高校(写真:PIXTA)
入試問題に差をつけたトップ校
公立高校入試と言えば、どの高校を受けても試験教科、試験時間、試験問題はみな同じだった。だが、高校進学率が97%に達し、オール1の生徒でも高校受験するようになると、学力幅の大きい受験生に対応した共通問題では、トップ校は実質的にケアレスミスで差がつき、学力を正当に測れないという問題が出てきた。
そこで各都県とも上位校については共通問題でなく高度な問題を出題している。
東京都は進学指導重点校である日比谷、戸山、西、八王子東、青山、立川、国立と進学重視型単位制をとっている墨田川、国分寺、新宿は、国語・数学・英語を「自校作成問題」、理科・社会は共通問題を課している。
入試で「自校作成問題」を課す公立が増えた(写真は都立西高校/学校HPより)
神奈川県は上位校の多くが学力検査とは別に「特色検査」を行って高度な学力を見ている。「学力向上進学重点校」と「学力向上進学重点校エントリー校」17校が実施。埼玉県では数学・英語の一部で難度の高い「学校選択問題」で実施できるようになっていて、21校が採用している。
こうした高校入試時点で、ひと昔前の基礎・基本中心でなく高度な勉強をしてくることを要求している点で、入学時点の学力が高くなっていることが東大合格者(特に現役合格者)が増えている要因でもある。