改名が決まった福井鉄道の越前武生駅。新幹線の越前たけふ駅の開設予定地とは約4キロ離れている
一方、街の玄関でもある鉄道の駅名はJRが武生駅、そして福井鉄道が越前武生駅。福井鉄道の駅はもともと武生新駅と名乗っていたが、市町村合併後の2010年に駅名を変更している。市の名前から消えた「武生」だったが、改称された駅名でもその名を頑なに守り通している。
改称して約十年、新駅名「越前武生」も定着してきたと思われるが、漢字とひらがなという違いはあるにしても、新幹線の新駅名が同音の”越前たけふ”に決まったことで、福井鉄道の越前武生駅が再改称を求められることは必至だ。
「駅名改称には、看板を付け替えたりシステム改修したりといった費用がかかります。福井鉄道は、これまでにも多くの駅で駅名を改称してきましたが、越前武生駅はバスやJRとの接続もあるので、ほかの駅よりも改称にかかる費用は多額になることは間違いありません」と話すのは福井鉄道の鉄道部担当者だ。
駅名の改称には、そのほかにも駅前広場などに設置される地図・看板類の変更、バス停留所、路線図などにも影響が出る。そのため、駅名変更は多額の費用と手間がかかる。
たとえば、常磐線の佐貫駅は2020年に龍ケ崎市駅へと駅名を改称した。同駅は茨城県龍ケ崎市の玄関にあたり、以前から駅名の改称が議論されてきた。もともと龍ケ崎市は2017年4月に消費税率が10パーセントへと切り変わるタイミングで駅名改称を予定していた。このタイミングで駅名を改称すれば、少しでもシステム改修費用を軽減できるという思惑があった。そんな工夫を凝らしても、駅名解消には約3億2900万円の費用がかかると試算されていた。
結局、消費税率10パーセントへの切り替えは2019年へと先送りされたこともあり、2017年に計画されていた佐貫駅の改称は一時的に取り止めとなった。
その後、龍ケ崎市は2020年春のダイヤ改正に合わせて駅名改称を実施する。このときは高輪ゲートウェイ駅が新たに開業するのにくわえ、東日本大震災で被災した常磐線の全線運転再開とタイミングが重なったことからシステム改修費が駅単独ではなく、路線全体の費用に吸収されたぶんが大きくなった。そのため、佐貫駅から龍ケ崎市駅への単体での費用は約2億4000万円まで縮減した。
北陸新幹線の開業によって福井鉄道の越前武生駅の改称に必要な費用は、これから詳細を詰めるという。越前市による駅名候補選定委員会の席上では「市が福井鉄道の駅名改称の費用を負担するなら、新幹線の駅名に”越前たけふ”の駅名を使用することに反対しない」との合意がなされた。そうしたこともあり、福井鉄道が改称費用を負担することは想定されていない。