福井駅?越前たけふ駅間で建設が進められている北陸新幹線
駅名の改称にまつわる問題は費用面だけではない。先述したように、福井鉄道は2010年に武生新駅から越前武生駅へと駅名を変更したばかりだ。頻繁に駅名を変えることになれば、利用者が混乱する。
しかし、今のところ「『また変わるの?』といった、再改称に戸惑うような声は聞かれません」(福井鉄道の担当者)という。
いずれにしても、北陸新幹線が開業することでシステムを改修しなければならない。それと同時に駅名を解消すれば、システム改修費を少しでも抑えられる。しかし。
「これまで福井鉄道が使用していた越前武生駅という駅名を新幹線の駅名として新たに使用することになりますから、日常的に利用する周辺住民へもさることながら、出張や観光客などで武生を訪れる人が混乱をきたさないように駅名改称を周知しなければなりません。そうした周知期間を考慮すると、最低でも1年間の猶予が必要になるでしょう。開業と同時に改称するのではなく、2023年内には福井鉄道の越前武生駅を改称する必要があると考えています」(越前市企画部総合交通政策課)
費用のことだけを考えて駅名改称の時期は決められないということだ。では、他の例ではどんなタイミングで駅の名前は変更されているのか。
昨年3月、京浜急行電鉄は花月園前駅を花月総持寺駅へ、仲木戸駅を京急東神奈川駅といった具合に多くの駅名を改称した。これら一連の駅名改称は、創立120周年の記念事業によるものだ。
また、今年3月には西武鉄道が西武遊園地駅を多摩湖駅へ、遊園地西駅を西武園ゆうえんち駅へと改称した。西武のケースは西武園ゆうえんちのリニューアルに合わせた駅名改称だから、京急とは事情が異なる。他方、東急電鉄は大学が移転しても学芸大学駅・都立大学駅を使い続けている。
駅名は地元住民や利用者にとってアイデンティティでもある。それだけに、新しい駅名をつけることや駅名を改称することには熟議が必要になる。地域の事情はそれぞれなので、十把一絡げに論じることはできない。
越前たけふ駅にも、JR西日本や地元自治体、住民などのさまざまな想いが交錯したことだろう。待ちに待った開業だけに、長らく愛される駅名になることを期待したい。