芳根京子さんの後ろにオバ記者の姿が
半径5メートルの「ハヒフヘホ」
それにしてもなぜ私が、ドラマの撮影現場にいるんだ? と思うでしょ。
あれは昨秋10月のこと。ライター仲間のKさん(48才)から「NHKのドラマ班スタッフが、オバ記者から話を聞きたいと言っています」と電話がかかってきたの。私は3年前から衆議院議員会館で代議士秘書のアルバイトをしていて、そこで電話を受けたんだけど、「ハイハイ、私で役に立つなら喜んで~」と二つ返事。議員会館にいらしてくださったNHKのスタッフさんに自分のこれまでの経験をしゃべりにしゃべった。なにせ、女性週刊誌の世界に足を踏み入れたのが23才のとき。41年もライターをしていりゃ誰だって、「何でも聞いて」状態になるって。
そのとき、すごく印象に残ったのは、「今回のドラマは、脚本・チーフ演出・制作統括が女性スタッフです」と言われたこと。佃煮にしたいほどおっさんだらけの国会とは大違い、と議員会館を行き交うダークスーツ族を目で追いながら思ったっけ。
ところで、『半径5メートル』というタイトルは、前出・Kさんの言葉がヒントになったらしい。Kさんも私同様、NHKスタッフからの取材を受けていて、ライターの実状をあれこれ伝えていたんだけど、そのとき、こんなことを話したんだって。
「女性週刊誌といえば“芸能スクープ”がメインで花形で、雑誌が売れるか売れないかの生命線。それが何より大切なんですけど、その一方、地に足の着いた生活情報もしっかりしていなくちゃいけません。
読者をハッとさせたり、ヒッと驚かせたり、フ~ンと興を煽ったり、へ~と感心させたり、ホ~と唸らせたり……読者の喜怒哀楽を生むネタやプランは、ライターや編集者が感じている“半径5メートルの困り事”からできているんですよね」
なるほど、たしかにドラマもそこをしっかり描いている。
1話目の『おでんおじさん』は、出来合いのおでんをコンビニで買う主婦に高齢男性が嫌みな言葉を投げかけるエピソードを女性目線で解きほぐしているし、2話目の『出張ホスト百人斬り』は、セックスレスの熟年夫婦の心の襞が、夫と妻の両サイドから掘り下げられている。
それにしても、このドラマでいい味を出しているのが永作さん。Kさんから「永作さんが“オバハンライター”を演じるらしいよ」と聞いたときは、驚きつつも、ちょっぴり誇らしい気持ちになった。永作さんは私と同じ茨城県出身。押しも押されもせぬ大女優が私と同じような役回りを熱演するとあって、ついつい私もその気になっちゃった。
多少なりともネタを提供したことを思い出した私はNHKのスタッフさんに無理を言って、「これも何かの縁ですから、エキストラでドラマに出して」と交渉したの。そうしたら、「声は出さないでくださいね」という条件で、なんとかエキストラの仲間に入れてくださることになったの。