尾野真千子を起用した理由について、同作のプロデューサーが語る。
「企画が立ち上がった段階で石井監督は『良子役は尾野さん以外いません』とおっしゃっていました。優しさと温かさに怒りを内包できて、コロナ禍で一緒に戦ってくれるのは尾野真千子さん以外いなかったです」
尾野は5月20日にTOHOシネマズ川崎で開催された「公開前夜最速上映会」で、大粒の涙をこぼしながら「今こういう作品を伝えなければいけない。それが私たちの使命だと思って、スタッフも出演者も監督も、場所を貸してくれた人も、みんな命懸けで作りました」と語っていた。唯一無二の役者が全身全霊を込めて挑んだ作品は、どのようなところが見どころとなるのだろうか。
「物語の序盤は本音なのか演技なのか分からない絶妙なニュアンスを見事に体現していて、物語が進むにつれて自然と母と子を応援したい気持ちにさせてくれます。実直で誠実に演じることに向きあった尾野真千子さんの結晶を是非ご覧いただきたいです。彼女の生きる姿にきっと勇気と希望をもらえます」(同前)
『茜色に焼かれる』は、今年11月に40歳という節目を迎える尾野真千子の新たな代表作と言うことができそうだ。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)