20平方メートル台の住戸が増えた背景
しかしコロナ前の新築マンション市場では、その逆の現象が広がっていた。それは「より狭く」、「よりコンパクトに」という流れである。
この8年ほど、新築マンションの値上がりはほぼ全国的な傾向であった。大きな理由はコストプッシュだ。人手不足による人件費の高騰が建築費のコストアップとなった。インバウンド向けのホテル需要の増大が土地価格を上昇させたのだ。黒田日銀総裁が行った異次元金融緩和による金利低下とマネー増加も、これらを強力に後押しした。
しかし、新築マンションの購入者である一般所得者の収入は横ばいか、むしろ実質的に減少している。消費税率のアップや公共料金の値上げもあった。個人所得は下がり気味なのに、マンションの価格が上がったら買えなくなるのは当然だ。
20平方メートル台のワンルームマンションも多数販売されてきた。
そこでデベロッパーたちが考えたのが、供給住戸の面積を縮小するという手法。面積が小さくなれば、販売価格も圧縮できるのだ。何とも短絡的なやり方であるが、あの業界では市場が販売不振期に入った時に採用されるお決まりの選択肢である。
大手財閥系のマンションデベロッパーが供給する都心エリアの新築物件に、当たり前のように20平方メートル台の住戸が混じるようになったのは2010年代の後半あたりからだ。
20平方メートル台といえばワンルームである。ベッドと小さなテーブルセットを設置すれば、もう他に家具は置けない程度の広さ。大手デべロッパーがそういうワンルーム的な狭小住戸を自社ブランドのマンションに組み込むこと自体、以前にはなかった。最初にそういった住戸を見たときには驚いたものだ。
そして、コロナ直前の2019年頃はすっかりありふれた光景になっていた。