園内での飲酒を防ぐため、一部立ち入り禁止のフェンスが設置された福岡市中央区の警固公園(時事通信フォト)
西口さんは優秀な高校に通っていた。当時から大人びた、頭の切れる男だった。何でも言うことを聞いた業界、無視した業界、のらりくらりとかわした業界――この1年以上、各業界の対応は様々だったが、パチンコ店は2020年の緊急事態宣言下、業界団体が従う姿勢を見せるも関東の一部店舗が徹底抗戦、結局ゴールデンウィークは全店休業を選んだが、このときの業界を挙げての「ホールはクラスターを出していない」という主張と姿勢こそが現在のエビデンスにつながっている。
「それにみなさん気づいたんでしょう、昨年のように何でもかんでも言うことをきくことはやめたように思います」
西口さんと会ったのは5月のゴールデンウィークと都の緊急事態宣言延長後だが、その間も柏は平常運転、かつての人出とまではいかないが賑わっていた。緊急事態宣言外の千葉県だからというわけではなく、実のところ、都内各所もそれなりの人出で賑わっている。通勤電車もそれなりの混雑ぶりだ。これは民を挙げての無言の抵抗、および政府に対する諦めではないか。
「昨年の”ホールがウイルスを撒き散らしている”みたいなバッシングは一切ないですね。パチンコに批判的な人も、業界の努力と結果は冷静に評価してくれているように感じます」
誰かのせいにするネタが尽きた
ライブハウス、劇場、パチンコ店、歌舞伎町、夜の店全般、観光地や旅行業界、そして居酒屋、飲酒――1年以上の間にどれだけの”悪”がやり玉に挙げられただろう。為政者の笛に踊らされた連中は、次々と悪人を吊るしては別の獲物を探した。
「あのときバッシングした人の中にも、いつの間にかバッシングされる側になった人もいるでしょうね」
私は舞台関係者ではない、音楽関係者ではない、パチンコ業界や水商売でもない――2020年の5月ごろ、こんな感覚でバッシングに加担した人々も、やがて旅行業界が、観光地と旅行者がバッシングされ(Go To トラベルを実施したのは日本政府である)、2021年に入ると居酒屋、外飲みから酒そのもののバッシングにまで繋がった。それぞれの愛好者も順繰りに窮屈となった。まさか酒までこんなことになると予想した人は少なかったのではないか。ナチス政権下の『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』がまさか令和の日本で繰り返されるとは。しかし大多数の日本人は当時のドイツ人より賢く気づきも早かった。いまやオリンピック翼賛運動には批判的、それどころか最大の悪は、その為政者どもが一般国民の命より大事にしていたはずの、オリンピックなる大運動会である。
「オリンピックはパチンコよりエビデンスないでしょう」