空きキッチンを貸し出すホテルまで登場
ホテルのテイクアウトグルメといえば、ビジネスホテルが空いているキッチンスペースを貸し出すケースまで登場した。
ビジネスホテルは宿泊に特化したホテルであり、朝食の提供はするものの、日中~夜はキッチンスペースが遊休スペースと化す。その点に着目したのがベッセルホテルズ(広島県福山市)だ。
「ベッセルイン上野入谷駅前」は、実店舗を持たないビジネスモデルとして注目されている「Ghost Kitchens」とコラボ、フランチャイズ1号店として2月中旬にオープンした。なんと、ここではホテルスタッフ自らがキッチンで料理を作り、ウーバーイーツを使って料理を発送するという。
同ホテル支配人の奥野悦子さんによると、「デリバリーはもちろん、ホテルに宿泊するお客様からも外食を控えたい、温かく美味しい料理が食べたいという声が多く好評です」という。不動産の観点からみても、ホテルは売り上げを作れる面積がいかに多いかが重要なポイント。朝食以外には利用されていなかったキッチンを活用するというアイディアは見事にフックした。
ホテル内で料理が作られるというのは、ホテルの公共性や信用という点からもマッチしている。「実証実験的にスタートしたが予想以上の売り上げ」と話すのは、株式会社ベッセルホテル開発の瀬尾吉郎社長だ。
ベッセルホテルズは現在全国に29施設を展開しており今後の出店も含めると計32施設のホテルチェーンとなる。「Ghost Kitchensさんとコラボしたフランチャイズ店は、今後、札幌・大阪・福岡の都市部を中心に全国的にある拠点での展開を目指す」(瀬尾氏)。ホテルキッチンで作られる料理同様に社長の思いは熱い。
今回、コロナ禍のホテルグルメ事情について、テイクアウト・部屋食を中心に具体的なケースも見てきた。ホテル客室への飲食物持ち込みという点については、無論ホテルによって認容や可否についてのスタンスは様々。実際の利用については事前に個々のホテルへ確認することが必要だろう。
コロナ禍がもたらすホテルサービスの変容については、その効果も含めて引き続き取材を進めていきたい。