スポーツ

ビジャレアル流の人材育成術 日本の少年チームはコーチも親も変わった

ヨーロッパリーグで優勝を果たしたビジャレアル(Getty Images)

ヨーロッパリーグで優勝を果たしたビジャレアル(Getty Images)

 スペインサッカーリーグで、久保建英選手が昨年在籍したことでも知られるビジャレアルは5月26日、UEFAヨーロッパリーグ決勝で英プレミアリーグの強豪マンチェスター・ユナイテッドを1-1のドローからのPK戦で下し、クラブ史上初のタイトルを獲得した。バレンシア州にある人口5万人の小さな町をホームタウンとする同クラブは、FCバルセロナと並んで欧州髄一の育成組織を擁することでも有名だ。「ホームグロウン」と呼ばれる小中学生や高校生年代の下部組織で育った選手が、トップチームで活躍する。

 例えばマンUとの決勝戦は、メンバー入り23人中9人がホームグロウン。スタメン11人中では5人もいた。

「さらにいえば、今季トップチームに絡んだ下部組織出身メンバーは16人いました」と語るのは、ビジャレアルで2008年から育成部でユースコーチ、メソッドダイレクターなど重要なポストを担ってきた佐伯夕利子さん(47)だ。

優勝カップを抱きしめる佐伯さん

優勝カップを抱きしめる佐伯さん

 現在Jリーグ常勤理事を務める佐伯さんは、クラブの育成メソッドを綴った『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』を先ごろ上梓した。佐伯さんが120人のコーチとともに2014年から取り組んできた指導改革を綴ったものだ。

 例えば、7つの育成術のひとつめは「自分の言動に意識を持つ」。佐伯さんは、指導改革の序盤、いま一度自分たちの指導を振り返ろうと、一人ひとりのコーチングをつぶさに撮影したという。スポーツ心理学者のサポートを得ながら、選手たちへの声掛けや、何に注目して指導しているのかがわかるよう記録。ピッチの外からコーチの姿や声をカメラでとらえるだけでなく、撮影される側のコーチは胸にアクションカメラとピンマイクをつけ、選手たちがその指導をどう受け止めているかまで探った。

 そうやって撮影したビデオを見て、コーチらは「あんなにシリアスに言ってしまうと、選手は怖がっちゃうよ」「あそこは選手に自分で考えさせたほうが良かった」などと互いに指摘し合った。佐伯さんはこう語る。

「私自身、当時ですでに指導歴は20年を経過していました。ベテランコーチと呼ばれる状況です。自分が指導する姿を見ること、仲間に見られること、本当に恥ずかしくてたまりませんでした。コーチ全員が同じ思いだったはずです。お互い痛みを伴ったわけですが、そこから自分たちのリフレクション(内省)が進みました」

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
このほど発表された新型ロマンスカーは前面展望を採用した車両デザイン
小田急が発表した新型は「白いロマンスカー」後継だというけれど…展望車復活は確定だが台車と「走る喫茶室」はどうなる?
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン