稲田朋美・元防衛相(時事通信フォト)
稲田氏の“変節”
稲田氏が保守派の“虎の尾”を踏んだきっかけは、「選択的夫婦別姓」を掲げたことだ。昨年11月、稲田氏が衆院法務委員会で結婚後も旧姓を使用できる法改正を提案すると、安倍氏が会長を務める保守派の有力議連「神道政治連盟国会議員懇談会」の事務局長を更迭され、安倍氏の“後継者候補”の座を追われた。
その経緯を稲田氏は『月刊日本』(5月号)でこう語っている。
〈更迭のきっかけは、法務委員会での発言だと思います。(中略)おそらく自民党議員で初めて選択的夫婦別氏について見解を述べたんです。それが神政連の中で問題になったようです〉
神政連や保守派の有力団体「日本会議」は、選択的夫婦別姓は「日本の伝統的な家族観の破壊につながる」と反対し、安倍氏も反対派として知られる。背後には「男系男子による皇位継承」を揺るがすという考え方がある。神道政治連盟国会議員懇談会の議員が語る。
「LGBT法案と夫婦別姓と女系天皇の主張はつながっている。国連の女子差別撤廃委員会は日本に選択的夫婦別姓の導入を迫り、男系男子による皇位継承を定めた皇室典範は女子差別だと典範見直しまで言及した」
それが“左傾化”という疑いを生んだようだ。当の稲田氏は本誌・週刊ポストの取材に、
「産経新聞の記事では、人権擁護法案を例に挙げて宗旨替えとしていますが、事実誤認です。人権擁護法案は『差別禁止』の名のもとに立ち入り調査など強い措置をとれるもので、この法律は認められないという私の考えは全く変わっていない。一方で、LGBT法案は理解増進を求めるものです」
と反論し、「安倍総理とは、機会に応じてお話ししております。安倍総理はいろんな方のお話をよく聞かれる方ですから、偏った判断をされる人ではないと思っています」と語った。
※週刊ポスト2021年7月2日号