『はるヲうるひと』舞台版と映画版それぞれに出演した(提供写真)
「舞台のときにはお二階にある“ちょんの間”や、売春宿・かげろうの目の前に広がっている海の景色や匂い、波の音という目に見えないモノを想像の力でつくっているぶん、それを伝えようと『演じる』という意識が強く、役を過剰に生きようとしていました。
けれど、映画では“ちょんの間”も海ももうそこにあって、なので演じるという意識なく『そこに在る』ことができたように思います」(笹野)
ぬいぐるみやベッドといった小道具の一つ一つからも様々な物語が立ち上がってくるのが、舞台版にはなかった映画版の見どころだ。
「たとえば女郎部屋でそれぞれに与えられている鏡台、その奥にある寝床の二段ベッドに並べられた薄汚れたぬいぐるみたち。
『あ〜このぬいぐるみは、まだ親に捨てられる前の幼い頃にりりが親に買ってもらったもので、こっちのぬいぐるみは親代わりだった〇〇さんがプレゼントしてくれたもので』とか、『今日は峯さん(坂井真紀)、今夜は純子(今藤洋子)と、ってその日その夜の気分によって、このベッドやお布団でよく添い寝しているのだろうな』とか。
舞台では感じ得ることのできなかったモノごとが勝手に生まれ出てくるような、坂本朗さんの素敵な美術にもご注目いただきたいです」(笹野)