国内

「失踪宣告」された元参謀・辻政信 謎の潜伏生活めぐる新資料を発掘

失踪から18年後、有志により建てられた辻政信の銅像(石川県加賀市)

失踪から18年後、有志により建てられた辻政信の銅像(石川県加賀市)

 警察庁Webサイトによれば、2019年(令和元年)の行方不明者の総数は8万6933人。この数字には、年々増加傾向にある認知症(またはその疑い)による行方不明者なども含まれているが、総数としては、過去10年ほぼ横ばいで推移しているという。

 そうした行方不明者の多くは、届出受理からまもなく、その所在(または死亡)が確認されている。だが、行方がわからないまま7年間が経過し、生死すら確認できない場合、不在者の配偶者などの申し立てにより「失踪宣告」がなされ、法律上、死亡したものと見なされる(最高裁判所ホームページ「失踪宣告」より)。

 今から60年前の1961年(昭和36年)、視察先のラオスで行方がわからなくなった現職の国会議員にして元陸軍参謀の辻政信も、生死不明のまま7年が経過し、1969年(昭和44年)7月14日に法的な死が確定した。

 失踪が報じられた当初は、辻の名前を全国に知らしめたベストセラー『潜行三千里』の再現ではないかと噂された。

 1945年(昭和20年)8月、敗戦をタイ・バンコクで迎えることになった作戦主任参謀の辻政信は、現地の軍司令部を離れ、僧侶の姿で「潜行」することを決意する。このときの行動については、のちに研究者らから「戦犯追及を免れるのが最大の動機だった」(秦郁彦著『昭和史の軍人たち』文藝春秋)とされているが、辻自身には大義があった。

〈原子弾の恐るべき威力と、抗命持久の前途とを冷静に、深刻に再検討し、退いて再建のため大陸に潜ろうと決意した。〉(辻政信著『潜行三千里』1950年版 毎日新聞社)

〈腸[はらわた]を千々にさかれるような苦悶をこえて、一人で大陸にもぐり、アジアの中に民族の再建をはかろうと決意をかためる。その行動がもし[天皇陛下の]大御心にそむく結果になったら、そのときこそ笑われないように腹を切ろう。〉(同書1957年版 東都書房)

関連記事

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン