中国製ワクチン(シノファーム、シノバック)を供与したモンゴル、チリなどではコロナが再拡大しており、米五輪組織委員会の幹部は、「中国選手を含め、中国製ワクチンを接種した選手たちは五輪に出場しても安全なのかね?」と皮肉る。東京五輪は「どの国のワクチンが優秀か」を競う場にもなりつつあるようだ。
といっても、アメリカが五輪に本腰を入れたのは6月に入ってから。これまでの大会のように万全の態勢で選手団を送り込むことができないのは事実で、大会関係者も急ピッチで準備を進めている。金メダル候補には、競泳のケーレブ・ドレッセル、シモーヌ・マヌエル、ケイティ・レデッキー、体操のシモーネ・バイルズなどが名を連ねるが、前出の組織委幹部は緊張した面持ちで言う。
「皆、超エリート・アスリートたちだ。我々には、これまでコロナ禍でトレーニングを積んできた彼らを安全な環境で競技させる責任がある。選手たちを守るバブルの中に、さらにバブルを作って守るつもりだ」
やはり日本側の対策では不十分と見ていることがうかがえる。在日米国大使館に勤務経験のある元幹部外交官は、「我々の立場で開催の賛否には答えようがない。日本政府も菅義偉・首相も、ここまできた以上はやる以外にない。もちろんアメリカはワクチン提供や選手派遣で側面支援する。これが無事に終われば、歴史に残る五輪になることは確かだ」と語った。G7での菅首相の開催宣言を受けて、アメリカはじめ友好国が五輪シフトを本格化させてしまった以上、日本は清水の舞台から飛び降りるしかなくなったのかもしれない。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)