でも、デビューからまだ1年半の頃、試合前の練習で膝を怪我し、歩けなくなった時は、「今日は休め」と言われました。「休め」「いや出ます」と押し問答していると、とうとう馬場さんが「俺が休めと言ってるんだから休め!」と怒りだし、こう諭されました。
「今日来てくれているお客さんは、ジャンボ(鶴田)、天龍、タイガーマスク(三沢光晴)を観に来てるんだ。お前を観に来てるんじゃない。だから休め。だが、お前がトップに立った時には、もう休むことはできないんだ」
悔しかったですね。
それからキャリアを積み、全日本プロレスの四天王と呼ばれるようになった頃、スタン・ハンセンとの試合で、椅子で殴られて腕を22針縫う大怪我をしました。
病院で腕を縫ってホテルに帰ると、馬場さんが葉巻を吸って待っていました。「ご迷惑をおかけします」と挨拶すると、馬場さんがニコッと笑ったんです。僕は休む気はないし、馬場さんも休ませる気はない。言葉を交わさなくとも、アイコンタクトでわかりました。トップの一員として認めてくれたんだと思い、本当に嬉しかった。
※週刊ポスト2021年7月2日号