「初弟子」を取った背景を語る
方正が続ける。
「ただ、初対面の時から『あ、これ大丈夫やな』とは思いましたね。彼は2年ぐらい前から僕の落語を何度も観に来ていて、いろんな落語家を知った上で僕のところに来てくれたんですよ。それに嘘偽りのない姿勢というか、ものすごい情熱も感じました。まるで若い頃の自分を見ているようだった。
とはいえ僕も彼のことをちゃんと知らなきゃと思って、2か月近くは見習いとして接しました。会話する態度とか立ち居振る舞いとか時間を守れるかどうかとか、一人の人間をこんなに深く観察したのは初めてというくらい。それで僕の中で『合格だな』と思って、4月20日に正式に弟子として入門してもらうことになったんです」
「ライバルは自分」の落語家に起きた変化
晴れて師匠と弟子という関係になった方正と柳正。弟子入り後はどのような指導を行なっているのだろうか。
「まずは武器も鎧もプライドも全部捨てて、まっさらな心を作ってくれと指導しています。僕がそうしてきましたからね。せっかく僕のところに来たんだから、僕から盗めるものはどんどん盗んで欲しい。
師匠と言うと偉そうですけど、僕もまだまだなんですよ。じゃあ何を一番教えられるのかと言ったら、やっぱり生き様かなと。落語って一人で舞台に立って、自分の力だけでお客さんを笑わすわけじゃないですか。その時の勇気とそれに至るまでの努力。一番勉強になるのはそこやと思います。
テレビのタレント活動はするなと言っています。柳正がやりたいと言うこともないですけどね。彼も僕と一緒でNSC出身なんですよ。だからまずは全身が落語の体にならないといけない。テレビの現場にも付かせていないんです」(月亭方正)