「老化は、『AGE(終末糖化産物)』という物質によって促進されます。AGEはたんぱく質と糖の結合によって増えますが、ブドウ糖よりも、フルーツの果糖の方がAGEを増やしやすい。『お肌にいいから』と必要以上に食べていると、シミやしわを増やす原因になるのです。もちろん、外見だけではありません。血管の老化が進むと動脈硬化を招き、心臓や血管など循環器疾患の原因にもなりかねません」
栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅さんは、フルーツに対する健康的なイメージに警鐘を鳴らす。従来、脂肪肝になりやすいのはお酒をよく飲む人といわれてきたが、実は一滴もお酒を飲まない“ヘルシー志向”の人も無関係ではない。
「中性脂肪が高い状態が1か月も続けば、肝臓に脂肪が異常に蓄積された『脂肪肝』になります。中性脂肪の正常値は30〜149mg/dlですが、ある患者は600mg/dlもあった。そこで食生活について尋ねると、頻繁にフルーツを食べていることがわかった。フルーツの摂取をやめるよう指導したところ、わずか1週間で100mg/dlにまで減少しました」(栗原さん・以下同)
“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓だが、実は、簡単に食生活の影響を受けやすい。たった4日間、シャインマスカットを毎日1房食べ続けたことで会社の健康診断に引っかかった患者もいたと栗原さんは言う。
ハイリスクであるにもかかわらず、「フルーツはたくさん食べても大丈夫」と多くの人が思い込んでいるのは、こんな理由がある。
「フルーツは、ご飯やパン、スイーツなどと比べて、食後の血糖値の上昇度合いを示す『GI値』が低い。そのため、糖尿病などの病気になりにくいとして、摂取を推奨する専門家もいます。しかし、果糖は小腸での吸収がほかの糖よりも速く、肝臓で中性脂肪に変わりやすいのです。脂肪肝になれば、血糖値を下げる働きをするインスリンが出にくくなることがあり、糖尿病リスクが格段に上がります」
つまり、フルーツは血糖値を急上昇はさせないものの、結果的に糖尿病を招くということ。
「フルーツはあくまでも嗜好品です。『朝食はフルーツだけ』『おやつにフルーツを食べるようにしている』という食習慣はやめましょう。また、『夜のフルーツは毒』といわれますが、エネルギーが消費されにくい夕食以降にフルーツを食べるのは、肥満街道まっしぐらだと心得てください」
1食で食べていいのはバナナ3分の2本まで
とはいえ、四季折々の味わいを届けてくれるフルーツを完全にやめてしまうのは味気ない。牧田さんは「摂取目安は1食10g」と話す。
「医学的に、やせたい人の糖質摂取量は1日60g以下とされています。3食食べるなら、1食あたり20gです。主食を筆頭に、あらゆる食べ物に糖質が入っていることを考慮すると、フルーツは1食につき10gまでにした方がいい。バナナなら、3分の2本程度の分量です」(牧田さん)