さて、データを眺めてみるといわゆる“乗り捨て”が面白いのである。すぐに乗り替わり、一度も戻って来ず、以降の成績も芳しくなかったのは92頭。大人の事情もあるのだろうけど、つまりは「また乗りたい」と思われなかった馬だ。
乗り替わり後に2勝以上をあげたのは25頭。見返してやった! の意気だろう。
そんな馬が先の重賞に出た。センショウユウト、牡6歳。2017年10月の京都の新馬で10着。すぐに乗り替わり後、藤岡佑で2勝、富田で1勝。前走は岩田康の手綱で10番人気を快勝している。24戦目の重賞初挑戦である。ルメールは他場にいて立ちはだかることはできない。これを買わない理由はない。中井騎手、テン乗りがんばれ! 結果は14着でした。
【プロフィール】
須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2021年7月16・23日号