コラムニストのペリー荻野さんは、「脇を固める俳優陣も魅力的だった」と話す。
「リアルタイムでドラマにはまった世代です。近所の生花店や貫太郎とともに働く石工として一家に絡んでくる名脇役たちが印象的でした。演じていたのはコメディアンの由利徹さんと伴淳三郎さん、左とん平さん(以上・故人)。彼らの掛け合いはもはや“名人芸”。そこに歌や踊りが入る回もあり、毎週“今日は何を見せてもらえるんだろう”というワクワク感がありました」
芸達者な面々の中でとりわけ視聴者の度肝を抜いたのは、当時31才の希林さんが演じた、70才の「きんばあちゃん」だろう。
「あの作品で樹木希林を知ったから、最初は本当のおばあちゃんかと思ってしまうくらい演技が上手だった。きんばあちゃんの部屋には大きな沢田研二のポスターが貼ってあって、毎回、眺めては“ジュリィ~”と叫んで悶えるシーンが印象に残っています」(60代女性)
現場に居合わせた浅田も、希林さんの役作りは印象深かったと語る。
「お年寄りに見せるために、しわやシミを描いたり、かつらをつけたりするのは嫌だとおっしゃっていました。だから、眉毛と髪の前半分だけを白く染めて、アップでまとめて撮影していた姿が目に焼き付いています。そうするとグレーヘアに見えるんです。
デニムスカートをはいて前部分だけのグレーヘアで現場にやってくる希林さんは、本当にかっこよくてパンクでした。年齢が出やすい手や首は、手袋やスカーフで隠していました。徹底した役作りに大きな刺激を受けました」(浅田)
魅力的な演者とともに視聴者を惹きつけたのはその斬新な内容だ。ペリーさんが言う。
「当時はテレビドラマの放映が始まって20年くらいたった頃。ちょうどドラマの“定型”が定まってきていて、ホームドラマといえば、家族はみんな仲よしで絵に描いたような幸せが定番になりつつありました。だけど貫太郎は、ギャグもあれば殴り合いのけんかもする。その一方で心の傷や人生の暗い部分も描かれています。これまでの定番を覆したところに、面白さがあるんです」