大胆不敵な15%超の「値上げ」

 ところで今回の新型Switchで任天堂が大胆不敵だと思うのは、本体価格を3万2978円から3万7980円と15%以上も値上げしたことである。

 一般的なマーケティング手法からすると、値上げは新型などのモデルチェンジ時に実施するのが良いとされるので、これ自体は不思議ではない。しかし、有機ELはすでにコモディティ(日用品)化が進んでいること、内蔵ストレージに使われるフラッシュメモリも、すでに32GB品は主流ではなくなっているので、ボムコスト(材料費)は現行のSwitchから大きくは上昇していないと思われる。

 日本は長期にわたり、物価が緩やかに下落する傾向が続いていたので、15%もの大幅な値上げはかなり勇気がいる決断だったと思う。

 しかし、値上げが成功すれば、任天堂には3つの利点がある。

(1)グローバルで見たときのインフレへの対応
(2)世界的な半導体不足に見られるような部品調達の競争力強化
(3)ハードが低採算というゲーム機ビジネスモデルからの脱却

いつまでもデフレ価格にできない

 まず、日本にいると物価は横ばいもしくは下落傾向が続いているのでなかなか実感できないが、米国では5月の消費者物価指数が前年比プラス5%となるなどインフレ傾向にある。今後どうなるか予測は困難だが、ここ20年ほどは米国のインフレ率は2%弱といったところなので、長期的に販売価格は上がっていくことになる。

 そのことを考えると、いつまでもゲーム機の価格を日本のデフレ価格にしておくわけにはいかないのである。そしてデフレは賃金の低下などマクロ経済に対する影響も大きい。

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