スポーツ

1964年東京五輪 選手村料理人の感動「米ソの選手が仲良くしていた」

東南アジアなどの選手向けの「富士食堂」の料理人だった鈴木勇さん

東南アジアなどの選手向けの「富士食堂」の料理人だった鈴木勇さん

 開幕目前となった東京五輪。選手村ではセレモニーや取材などが大きく削減され、閑散とした状態だ。各地での事前キャンプなども中止となり、世界の選手との交流の機会は失われつつある。

 一方、1964年の東京五輪の選手村では、貴重な交流や、活気ある盛り上がりが見られたという。選手村で行われた着物の着付けサービスは外国人選手に好評で、連日選手が訪れた。

 選手村跡地に整備された代々木公園内には、オランダ選手が利用した宿舎が保存されている。また、記念宿舎の周囲には五輪に参加した国の代表的な樹木が種子から育てられ、植えられている。

 当時、選手向けの食堂が整備されたことも注目された。そのうちの一つで、東南アジアなどの選手向けの「富士食堂」の料理人だった鈴木勇さん(81)が語る。

「勤務先の洋食店の勧めで選手村の料理人となり、貴重な体験を記録しようと厨房や選手村の様子を写真に収めました。選手村では冷戦中のアメリカとソ連の選手が仲良くしていて、これが平和の祭典なのかと感動しました。ただしそんな余裕も数日だけ。約7200人分の3食を300人で作るため、途中から記憶がないほど忙しくなりました。

 重量挙げの三宅義信さんが金メダルを獲って挨拶にきてくれた時は、『食事が喜ばれているんだ』と厨房の励みになった。東京五輪での経験が後の料理人人生の大きな支えとなりました」

 選手村で選手に声をかけると、「OK!」と気軽に記念撮影やサインに応じてくれたことも明かした。「大鍋は人が入れそうなほど巨大でした」とも振り返る。

 当時は、「ノイローゼげき退作戦」という防疫通信をはじめ、外国語用語集など従業員に様々な手引きが配布された。

※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号

関連記事

トピックス

独走でチームを優勝へと導いた阪神・藤川球児監督(時事通信フォト)
《いきなり名将》阪神・藤川球児監督の原点をたどる ベンチで平然としているのは「喜怒哀楽を出すな」という高知商時代の教えの影響か
週刊ポスト
容疑者のアカウントでは垢抜けていく過程をコンテンツにしていた(TikTokより)
「生徒の間でも“大事件”と騒ぎに…」「メガネで地味な先生」教え子が語った大平なる美容疑者の素顔 《30歳女教師が“パパ活”で700万円詐取》
NEWSポストセブン
ロッテの美馬学投手(38)が今シーズン限りで現役を引退することを発表した(時事通信フォト、写真は2019年の入団会見)
《手術6回のロッテ・美馬学が引退》「素敵な景色を見せてくれた」国民的アニメの主題歌を歌った元ガールズバンド美人妻の想い
NEWSポストセブン
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン
LUNA SEA・真矢
と元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《80歳になる金婚式までがんばってほしい》脳腫瘍公表のLUNA SEA・真矢へ愛妻・元モー娘。石黒彩の願い「妻へのプレゼントにウェディングドレスで銀婚式」
NEWSポストセブン
昨年10月の総裁選で石破首相と一騎打ちとなった高市早苗氏(時事通信フォト)
「高市早苗氏という“最後の切り札”を出すか、小泉進次郎氏で“延命”するか…」フィフィ氏が分析する総裁選の“ウラの争点”【石破茂首相が辞任表明】
NEWSポストセブン
万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン