スポーツ

元サッカー日本代表もLGBTQ告白で東京五輪にまた重い課題

横山はアメリカで「自分は男性」と告白(dpa/時事通信フォト)

横山はアメリカで「自分は男性」と告白(dpa/時事通信フォト)

 異例ずくめの東京五輪・パラリンピックは、史上最多のLGBTQ(性的マイノリティ)が集う大会でもある。米スポーツ専門サイト「アウトスポーツ」が今回参加するLGBTQ選手の名前を公表した。それによると、自ら名乗りを上げた選手だけでも142人。前回のリオ五輪は56人だったから一気に2.5倍に増えたことになる。急にLGBTQが増えるわけではないから、この5年で社会的理解が進んだことが大きな要因だろう。

 最多はアメリカの30人。次いでカナダ16人、英国15人、オランダ14人、オーストラリア10人、ニュージーランド9人、ブラジル9人。アジアではインド、フィリピン、トンガがそれぞれ1人。日本、中国、台湾、韓国、北朝鮮はゼロだ。もちろん日本をはじめとする東アジア諸国にLGBTQ選手がいないわけではない。五輪取材に当たる米メディアの女性記者はこう分析する。彼女自身、レズビアンであることを公言している。

「中国や北朝鮮のような儒教思想が色濃く残る東アジアでは、独裁国家はむろん、日韓のような民主国家でも同性愛は依然として法的に保護されているとはいえないし、社会的にも完全には受け入れられていない。反同性愛主義はこれらの国のスポーツ界ではいまだ根強い。各国の五輪委員会がLGBTQを最初から排除している可能性もある」

 同記者は一例として、元サッカー日本代表で、現在は全米女子サッカーリーグ(NWSL)で活躍する横山久美選手(27)が、今年6月になって「自分は男性」だとカミングアウトしたケースを挙げ、これをジョー・バイデン大統領がツイッターで歓迎したエピソードを指摘した。横山選手は日本で告白すれば選手生命を絶たれただろうというのである。

 東京五輪は日本スポーツ界の「LGBTQ拒否体質」を打破する起爆剤になり得るが、バラ色の未来ばかりが見えているとは言えない。LGBTQ選手が参加するのは26競技。一番多いのは女子サッカー。次いで女子ラグビー、ソフトボール、水泳、陸上だ。

 女子サッカーでは、お馴染みアメリカのエース、ミーガン・ラピノー(36)はじめ30人以上。「性別」の内訳は「女性」8に対し「男性」1の割合だ。性的指向については社会の理解があれば障壁はそれほど高くないが、スポーツシーンでどうしても物議をかもしてしまうのが、元男性のトランスジェンダー選手を女子競技に参加させていいのかというテーマだ。ニュージーランドの女子重量挙げ、ローレル・ハバード選手(43)は、2012年に性転換して女性となり、国際大会でも女子選手として活躍してきた。3年前に腕を骨折したが、見事復活して、初のトランスジェンダーのオリンピアンになった。IOC(国際オリンピック委員会)では、「女子選手」の基準として男性ホルモンであるテストステロンの値が一年間にわたり一定以下であることと定めており、ハバード選手はそれを満たしているが、生まれながらの女性の選手からは不公平だという声も多く挙がっている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
男が立てこもっていたアパート
《船橋立てこもり》「長い髪に無精ヒゲの男が…」事件現場アパートに住む住人が語った“緊迫の瞬間”「すぐ家から出て!」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン