たとえば「特権階級だけがワクチンを打っている」というデマが、たいした拡散力をもたないのはなぜか。簡単に言ってしまえば、このデマでビジネスを成立させるのが難しいからではないのか。前述のデマで儲けようと思ったら、どうしてもワクチンを打ちたい人向けに接種券の偽造や、闇ワクチン製造をするのが近道だろう。だが、ワクチンは作ろうと思い立ったてもすぐに作れるようなものではなく、専門的な知識が求められ、騙す方としてもしっかりとした事前準備が必要だ。それに引き換え、ワクチンに対する不安をあおるだけで、ワクチン以外の商材を売りつけることは簡単で、拡散が進めばある意味での「持続性」も見込める。
嘘やデマは人心を混乱させ、社会の不安定にする、ということは誰もが気づいていることだろう。もう一歩すすめて、嘘やデマがなぜ存在するかについても、今一度、各々が考える必要がある。嘘やデマによって、誰かを貶め、混乱させようとする意図の先にあるのは、いつだって金や利権なのだ。物事が真実かどうか、二元的な議論で騙されている人たちの目を覚まそうとするよりも、あなたが明確な悪意ある嘘に利用されているのだという構図を示す方が、理解されやすいのかもしれない。