皇室との調整不足が露呈した(Getty Images)
2002年のソルトレークシティー冬季五輪で開会宣言をした当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領は、五輪憲章で決められた文章に「誇り高く感謝の気持ちを忘れない米国民を代表して」と付け加えた。しかし、自国アピールの、勝手な文言の変更には強い批判もあった。一歩間違えば、そうした批判の対象になりかねない「文言の変更」を、陛下は実行された。そこには、相当なご覚悟が感じられる。
「『拝察』発言のような代弁とは違い、陛下のお言葉には陛下のご意思そのものが色濃く反映されます。もともと陛下は式典や行事などでも用意された文章を、そのまま読み上げる方ではありません。常に言葉一つひとつを吟味し、自分なりに最適なものを選ばれます。ですから、コロナの情勢下でどんな言葉がよいか、熟考を重ねられたはずです。その上で“祝う”は適当ではないと判断されたのだと思います」(前出・別の宮内庁関係者)
積極的にかかわることはできない
感染を拡大させないため、観客を入れないこと。“祝う”という表現を変えること。それらが、陛下が開会式に出席される条件だったことは想像に難くない。そして最後の条件こそが、「雅子さまのご欠席」だったのではないか。
「雅子さまを“外交のキーマン”と見ている官邸は、天皇皇后両陛下でのご出席を望んでいました。ですが、“国民不在”の五輪に雅子さまが出席されれば疑問の声が上がりかねない。“国民に寄り添う”両陛下の姿勢ともかけ離れます」(前出・宮内庁関係者)
開会式当日の7月23日の日中、皇居・宮殿には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やアメリカのジル・バイデン大統領夫人など各国要人12人が訪れた。そのとき面会をされたのも、陛下おひとり。雅子さまはお姿を見せられなかった。
「感染状況を考慮し、ゲストも単独での訪問でした。ひとりで来たから陛下おひとりで対応された、と公表したのだと思います。ですが、今回の場合は、それ以上のものを感じる可能性もあるでしょう。
もしかすると、“五輪に積極的にかかわることはできない”という姿勢を伝えているのかもしれません。時世への懸念を抱かれた両陛下は、政府の対応に疑問を持たれ、“できる限りかかわらない”ようにしているとみることもできます」(前出・河西さん)
陛下の開会式出席が発表されたのは、式の3日前、7月20日だった。
「『無観客開催』『開会宣言の文言変更』『雅子さまのご欠席』、これら3つが、陛下が出席されるにあたっての“条件”だったのでしょう。菅総理がそれらの注文をのみ、なんとか陛下のご出席が実現した。1つでも欠けていたらどうなっていたかわかりません。開幕の前には、そんな薄氷を踏むような駆け引きが行われていたのでしょう」(前出・別の官邸関係者)
※女性セブン2021年8月12日号