芸能

阿久悠さんと筒美京平さん、初タッグ曲『また逢う日まで』誕生秘話

『また逢う日まで』は紆余曲折を経て誕生した(写真は阿久悠さん。撮影/稲越功一)

『また逢う日まで』は紆余曲折を経て誕生した(写真は阿久悠さん。撮影/稲越功一)

 昭和歌謡界の巨匠の2人、阿久悠さんと筒美京平さん。阿久さんは1966年に広告会社を退社し、放送作家として独立。翌年、ザ・モップス『朝まで待てない』で作詞家本格デビューし、1970年には森山加代子『白い蝶のサンバ』で初のチャート1位を獲得して、ヒットの階段をのぼりはじめた。

 一方の筒美さんは、1966年に藤浩一『黄色いレモン』で作曲家デビュー。1968年12月に発売されたいしだあゆみ『ブルー・ライト・ヨコハマ』が翌1969年に初の1位となり、1970年には朝丘雪路『雨がやんだら』がヒットした。

 そんな2人が初めて組んだ作品は、1971年の尾崎紀世彦の『また逢う日まで』であった。同年の日本レコード大賞と日本歌謡大賞をダブル受賞した国民的ヒット曲。さすが稀代のヒットメーカー同士、最初から名曲を送り出したと言いたいところだが、実は紆余曲折を経て誕生したものだった。同曲はもともと三洋電機のエアコンのCM用に筒美さんが作曲。作詞は『アンパンマン』作者のやなせたかし氏が担当したが、スポンサーの意向でボツとなる。

 1970年には阿久さんが詞をつけて『ひとりの悲しみ』(歌:ズー・ニー・ヴー)として発売されるもヒットに至らず。だが、メロディの良さに惚れ込んでいた音楽プロデューサーが、書き直しを渋る阿久さんを説得。タイトルと詞を変えて『また逢う日まで』として甦る。今では日本を代表するスタンダードポップスだが、筒美さんにとっては“3度目の正直”だった。

【プロフィール】
阿久悠(あく・ゆう)/1937年生まれ、兵庫県出身。2007年8月1日没。詩人・作詞家・作家。シングル総売り上げは6800万枚以上。日本レコード大賞受賞曲は作詞家として最多の5曲。『瀬戸内少年野球団』など小説も多数。

筒美京平(つつみ・きょうへい)/1940年生まれ、東京都出身。2020年10月7日没。作曲家・編曲家。シングル総売り上げは7600万枚以上。日本レコード大賞受賞曲は2曲。作曲賞は最多の5回。

取材・文/濱口英樹

※週刊ポスト2021年8月13日号

筒美京平さん

筒美京平さん

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン