恐ろしいのはそれだけではない。奥村さんは動画を見続けることで脳の容量がパンクし、機能が著しく低下すると指摘する。
「人間の脳は、情報を受け取ると司令塔の役割を果たす前頭前野で処理します。大脳の3割を占める前頭前野には浅く考える機能、深く考える機能、ぼんやりと考える機能の3つの機能がありますが、スマホ動画を見すぎるとあっという間にこれらの機能の容量がいっぱいになり、パンクしてしまう。すると物忘れがひどくなって相手との約束や会議の予定を忘れることが多くなり、とっさの行動がしづらくなるなど、認知症のような症状が出ることがあります」
奥村さんのもとにはスマホの使いすぎが原因で物忘れがひどくなり、家事や仕事に支障をきたして来院する患者が後をたたないという。
「症状は物忘れだけではありません。視覚情報が多すぎると、それを処理するために脳の機能の大半が使われるため物事を深く考える機能も退化して、思考力や集中力、判断力やコミュニケーション能力などさまざまな機能に障害がみられるようになります。
しかも、YouTubeやTikTokなどの投稿サイトでは関連のある動画が際限なく自動的に再生されるため、脳が休まる暇がありません。スマホ動画ばかり見ていると、自分の人生をどう生きていくかを考えられなくなり、“我に返らず、我を忘れる”ような人になってしまいます」(奥村さん)
※女性セブン2021年8月19・26日号