監督は思ったことを口に出さないので、こちらで悟らないといけない。監督の「嫌だ」は「やりたい」なんです。
ヤクルトの球団社長から監督の話がきた時にも「嫌だ」と言う。天邪鬼なので素直に「やりたい」とは言わない。人の弱点を見つけたりして観察するのが仕事だから、自分も弱点を見られたくないのでしょう。
その本心を察してあげたのがサッチーで、「この人の“嫌い”は“好き”だからね」とお尻を叩いてやらせる。最高のコンビで、監督はサッチーから「嫌じゃないわよ、行きなさい」と言われるのが好きだった。講演も「行きたくない」と言いながら60分の予定を90分オーバーする。野球解説もやりたいのに「やりたくない」と言って、スケジュールに入れておくと行くんです。本も「出したくない」と言いながら、取材をすると延々と話し続ける。
監督は出不精だからとにかく仕事をさせないと引きこもってしまうということで、晩年も週に4~5本は仕事を入れていました。
「こき使うな」と言いながら、喜んでスケジュールをこなしていた姿が今も浮かんできます。
※週刊ポスト2021年8月20日号