視聴者のあいだでは百音のキャラクターをめぐって議論も(時事通信フォト)
百音のキャラクター自体も、ずいぶんと変化しています。百音のような新人の気象予報士が、流れでアスリートのコーチ&マネージャーみたいになり、我の強い鮫島さんを相手にレースプランの変更を積極提案するなんて。そんな明晰な判断力や意志を持つ人物だったでしょうか?
これまでの百音はどこか優柔不断で自分の意志が自分でも把握できないようなタイプでした。まず受け止めてから静かに物事を考え方向をさぐっていく人。もちろんそういう人がいていいし、現代を舞台にしたドラマなら迷う人もリアリティがある。主役を演じる清原果耶さんは精一杯、脚本にある人物像を理解しそれに沿った百音を描き出そうと頑張ってきたと思います。しかし、その百音が大胆なプラン変更をアスリートに提案するのは、かなりの唐突感でした。
このドラマ、もしかしたら百音という人が本当の中心軸になっていないのかも? 目立つのはむしろ「気象予報士」といったテーマ性。目新しい仕事で人々を興味を惹きつけようということかもしれません。
あるいは「東日本大震災から10年」というテーマや、放送局が盛り上げたい「パラリンピック」という要素や、恋愛話も挿入しようとか。その都度ご都合主義的に入ってくる要素に百音が振り回されているように見えます。だから視聴者も主人公にうまく感情移入したり共感できないのでしょう。
何といっても残念なのは、演技力もあり朝ドラの主役に抜擢され大いに期待された19才の清原果耶さんが、キラキラと輝いて見えないこと。年の割に老けて映るなんてあまりに哀しい。そもそも百音はどういう人物なのか。素直なのか策士なのか幼いのか成熟しているのか。その点をもう少しはっきりしてイライラの発生源を取り除いてほしい。百音の立ち位置や葛藤や頑張り、失敗や立ち直りといった要素が明解に描かれると、モヤモヤが晴れていくのでは?
百音たちは鮫島に「プランA」を取り下げて、強い風に向かって感覚的に走るという「プランB」を提案しました。そう、このドラマも考える必要があるのかもしれません。百音という人物の輪郭をくっきりと深く描き出す、「プランB」について。