人種や人権を重んじるバイデン大統領だが…(写真/AFP=時事)
だが、今月に入ってからタリバンは次々と州都を制圧し、わずか10日あまりで、首都カブールを制圧した。撤退する時が最も危険だと戦争体験者から聞いたことがあるが、タリバン側は絶好の機会とばかりに勢いを増したのだ。ガニ大統領は「流血の事態を避けるため」と戦うことなく国外へ逃亡、政府軍も戦おうとしなかった。
様々なメディアが、ガニ大統領の指導力が疑問視されていたことや、実際には内政が麻痺していたことなどを伝えた。だが、バイデン政権はこれらを過小評価し、本当は危険な状態で大きな問題をはらんでいたにも関わらず、アフガニスタン政権の実態を自分たちに都合よく解釈したのだ。心理学の視点で見れば、「正常性バイアス」の罠にはまったと言える。
アメリカが受けた衝撃と世論への影響は想像以上に大きかった。タリバンの勝利は、バイデン政権の“敗北”と言われるほどの影響を与えることとなった。ありえないと思っていたことが起きると、その衝撃は強く、影響は大きくなる。こうした事象を「ブラックスワン理論」という。
バイデン大統領は8月16日の演説で、撤退について「正しい決断だった」と述べたが、アフガニスタンから避難しようと動き出す米軍機にしがみつき振り落とされていく人々の姿や、米軍の輸送機にすし詰め状態で座るアフガニスタン人々の姿はショッキングな光景だった。人種や人権など多様性を重んじるバイデン政権にとって、今回の一件が与える今後の影響は決して小さくないだろう。
メディアは、バイデン政権よりタリバンの言動について詳しく報じ始めた。アフガニスタンはこれからどんな国になっていくのだろう。