嫌がらせをしていた山本被告の「元カレ」一家、そして結婚を夢見ていた女性「実」、その「父親」、すべてが山本被告ひとりで作り上げた、なりすましや架空アカウントだったことを小船受刑者が知ったのは、逮捕された後の取り調べでのことだ。
小船受刑者に面会取材を申し込み、その時の気持ちを尋ねると、こう語った。
「ショックというより……全てを知った時に、自らのやったことの重大さを知り、そこから、嘘をつかずに全て話すことを決めました」
前橋地裁の裁判員裁判でも、同じように「どんな理由があっても、人を殺めてはいけないのに、殺めて反省している」と語っていた。
「実」や「実の父親」とのやりとりは、途中からLINEだけでなくテレグラムというアプリでも行われていた。一定期間が過ぎればやりとりが消えてしまうため、特殊詐欺や薬物取引などの連絡にも悪用されることがあるアプリだ。そのため、携帯電話にテレグラムの通信記録は残っていない。小船受刑者の自白により、事件の全貌が明らかになったのだが、とはいえ判決では「架空の話を信じ込んだ男は各犯行のほぼ全てを実行し、役割は大きい」と指摘されている。
小船受刑者は今回取材を受けた理由を手紙にこう綴っていた。
「事件の真相を世の中の皆様にわかってもらいたい。もちろん、私がやってしまったこと、それは決して許されることではありません。何の罪もない人の命を殺めてしまっているので、私が今できること、それは私自身の公判でも言いましたが、真実を語り続けることだと思っています」
架空のアカウントを使って小船受刑者を操っていた山本被告の公判は今後開かれる見込みだ。