裁判と並行し、交通事故撲滅活動を続ける松永拓也さん。遺族としての体験をオンラインで語った。

裁判と並行し、交通事故撲滅活動を続ける松永拓也さん。遺族としての体験をオンラインで語った。

 2019年4月19日、朝、玄関で『いってきます』『いってらっしゃい』と言い合いながら、2人とハグをしました。まさかそれが最後の別れになるなんて、思ってもいませんでした。会社の昼休みにいつもの通りテレビ電話で2人に電話をかけると、2人は公園で遊んでいて、僕が『定時に帰るよ』と伝えると、莉子は飛び跳ねながら喜んでいました。

 2時くらいに、突然警察から電話が来て、真菜と莉子が事故に遭ったと告げられました。パニックになりながらも急いで病院に向かいました。電車の中で、『池袋で事故、30代と思われる女性と3才くらいの女子が心肺停止』というニュース速報が私のスマホに飛んできました。そのニュースを見た瞬間、手足が震えだして、私はそのまま電車の床に座り込んでしまいました。その後の記憶はあまりないです。

 病院に到着すると、医師から『即死でした』と宣告されて、ただただ泣き叫ぶことしかできませんでした。そのまま2人の元へ案内されて、真菜の顔にかけられた布をめくると、顔が傷だらけで、氷のように冷たくなっていました。次に莉子の顔を見ようとすると、『お子様のお顔は見ない方がいいと思います』と看護師の方に言われました。 

 顔にかけられた布がうっすらと血で染まっていて、状況を察してしまいました。小さな手を握ると、固く冷たくなっていました。『莉子』と名前を呼んでみても、手を握っても、握り返してくれないのです。生まれたときの温かい手やいつも3人で繋いでいた手とあまりに対照的で、絶望を感じました。

 次の日、家に2人の遺体が運ばれてきました。2人の棺の蓋を交互に開けては、ずっと語りかけました。真菜にはどれだけ愛しているのか、感謝しているのか。莉子には、私たちの子どもに産まれてきてくれて、たくさんの幸せをくれたことに『ありがとう』と伝えました。 

 最後に顔を見てお別れをいいたいと思い、布をめくろうとしましたが、少しめくっただけで、莉子の顔は完全に陥没してしまっていることがわかりました。全部見たら、私の精神が壊れてしまうと思い、諦めました。最後のお別れなのに、娘の顔すら見ることができないのです。この無念さは計り知れません。

 お葬式の日、参列者の方々が棺の中に花を一輪ずつ入れていくのですが、どんどん花に埋もれて2人の姿が見えなくなっていき、いよいよ顔しか出ていなくて、それも見えなくなるとき、私は取り乱してしまいました。何度も何度も2人の棺を行き来して、『愛している』『ありがとう』と伝えて、傷だらけの顔に口づけをしました。蓋を閉められたくなくて、何度も2人の棺を往復しました」(松永さん)

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