国内

自民党総裁選「党員調査結果」の衝撃 石破・河野一本化の舞台裏

2人が手を組む背景には、ひそかに行われた「党員調査」アンケートがあった(時事通信フォト)

2人が手を組む背景には、ひそかに行われた「党員調査」アンケートがあった(時事通信フォト)

 新聞各紙は独自に自民党総裁選(9月17日告示、9月29日投開票)の世論調査を実施し、〈石破氏、党員票の優勢崩れる…若手議員「河野氏の後じんでは厳しい」〉(読売新聞オンライン9月7日配信)、「次の首相に、河野氏トップ31% 石破氏26%、岸田氏は18%」(東京新聞ウェブ版9月5日。共同通信調査)などと「河野氏のトップ」を報じている。しかし、総選挙と違って総裁選の選挙権を持つのは全国約113万人の自民党員・党友だ。一般有権者を対象にした新聞の世論調査は党員票の動向を正確に反映しているとは言えず、いわば国民の“人気投票”の域を出ない。

 実は、もっと正確な調査がある。本誌・週刊ポストが入手したのは、自民党がさる9月4日、党員・党友を対象に実施した総裁選の情勢調査の結果をまとめた資料だ。A4判1枚に整理された集計表には、「2021年9月4日 総裁選調査(調査対象:自民党党員)都道府県別」の表題がつけられ、都道府県毎に総裁選各候補の得票とその割合が一覧表になっている。

 質問は3項目。

【1】菅総理が辞退されたことで自民党に活性化が生まれると思いますか?
【2】総裁選挙で派閥の力が大きな影響を持ちます。あなたはどう思いますか?
【3】報道その他で立候補が予想される中であなたは誰に投票したいと思いますか?

 そして3問目に続いて、岸田文雄氏、河野太郎氏、石破茂氏、高市早苗氏、野田聖子氏、下村博文氏の6人の名前と、「まだ分からない」という選択肢がある。調査数は全国2135人となっている。

石破氏は31都道府県で単独トップ

 結論から言えば、党員の支持1位は石破氏。東京、千葉、埼玉など31都道府県で単独トップに立ち、全体の得票率は29%だ。

 2位は河野氏で地元の神奈川、大阪など8府県で単独トップ(全体の得票率21%)、3位の岸田氏は地元の広島、福岡など4県で単独トップ(同19%)、4位が高市氏で地元・奈良で単独トップ(同8%)、以下は5位野田氏(1%)、6位下村氏(0%)の順だ。他に、石破氏と河野氏が同率首位だったのが1県、岸田氏と河野氏が同率首位だったのが1県ある。新聞の世論調査とはかなり違う結果だ。
 
 そもそも自民党が総裁選直前に党員票の動向調査をするのは異例と言っていい。出馬する各陣営は情勢を知りたいだろうが、公平・中立に総裁選を実施運営する立場の党本部が事前に党員票の動向を調べる大義名分がない。たとえ内々に調査をしていたとしても、これまで結果が流出したことはなかった。

 形式的には、この調査は総選挙が近づく中、菅義偉首相が突然の総裁選不出馬を表明(事実上の退陣表明)し、新総裁を選ぶことになったことを党員がどう受け止めているかの意識調査の体裁がとられている。しかし、設問には政治的意図が感じられる。

 自民党の各派の中堅若手議員には総裁選での派閥の引き締めに反発し、自主投票を求める声が強い。そうした声に応じるかのように、設問【2】には、総裁選で「派閥による引き締め」(派閥幹部が誰に投票するかを決め、所属議員に対してその候補に投票するように指示して従わせるやり方)の是非を問う設問がわざわざ盛り込まれている。

 ちなみに回答は、「派閥の選挙では自民党は国民から見放される」が47%、「選挙に派閥が関わるのは仕方ないと思う、悪い事ではない」が53%と伯仲している。従来から行なわれている総裁選での派閥の引き締めを容認する意見が過半数なのは自民党のやり方をよく知っている党員ならではかもしれないが、「見放される」との回答が5割近くにのぼっていることは、各派も無視できないはずだ。

 また、設問【3】がこの調査の主眼だったと思われるが、それでも、まだ立候補者の顔触れが決定しない段階で、報道ベースで投票先を問うのも党の調査としてはフライングだろう(自民党総裁選挙管理委員会事務局に聞くと、「そうした調査については、承知していません」と回答)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

金メダリスト萩野公介の離婚の真相に関係するであろう一文字
【萩野公介・離婚の真相】スピリチュアルな話が増えてmiwaとの夫婦生活に区切り、LINEプロフィールが“漢字一文字”に変わり周囲びっくり
女性セブン
大谷の母・加代子さん(左)と妻・真美子さん(右)
《大谷翔平を魅了》結婚相手・真美子さんの手料理は「お店のようなクオリティ」母・加代子さんの想いを受け継ぐ「温かな食卓の原風景」
NEWSポストセブン
ドジャースの公式Xより
ドジャース山本由伸が韓国遠征で「ジャージー×400万円バーキン」ファッション、なぜ野球選手は“ブランド好き”? かつては「ヴィトン×金ネックレス」が定番
NEWSポストセブン
板東英二のオフィシャルWEBサイトより
《吉田羊が連呼!》板東英二の“ふてほど”出演はあるか? “消息不明”の近況は…仕事オファーも断っている状況、“野球界のレジェンド扱い”も固辞か
NEWSポストセブン
税務職員たちの“カネにまつわる不祥事”が次々と明らかになった
【情報公開請求】税務署職員の懲戒処分144件を調査 カネに関する不祥事が続々「虚偽の確定申告」「不正受給」「勤務中FX15000回」で処分も
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)と妻の田中真美子さん(レッドウェーブ公式サイトより)
大谷翔平の結婚相手・田中真美子さん、抜群の好感度でメディア出演待望論 モデル、キャスター、インフルエンサーなど幅広い分野での存在感に注目
NEWSポストセブン
活動は今年10月で一区切り“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(84)
《右耳聴覚も失っていた》“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(84)が語った「活動は今年10月で一区切り」と「叶えたい夢」
NEWSポストセブン
3月5日に「ガスト」店内と思われる場所で撮影された”調味料一気飲み”の動画が拡散された
《ガストで調味料一気飲み》迷惑動画を撮影・SNS拡散の3人がついに全員謝罪も運営会社は「厳正な対処」を継続方針
NEWSポストセブン
大谷翔平(Getty Images)と妻の田中真美子さん(レッドウェーブ公式サイトより)
【彼女はめっちゃ甘え上手】大谷翔平の結婚相手・田中真美子さん、大学同窓生が明かす素顔「チャラ男は好きじゃない」
NEWSポストセブン
羽生と並んで写真に収まる末延さん(写真はSNSより)
【全文公開】羽生結弦のアイスショーとバイオリニスト元妻のディナーショー、公演日程が丸かぶり 「なぜ同じ日に?」と関係者困惑
女性セブン
元横綱・白鵬の周りでは様々なトラブルが…
元白鵬・宮城野親方に関する「暴行告発状」“白鵬米”販売会で写真撮影をめぐるトラブル「取り巻きが市議にヘッドロック」証言
週刊ポスト
話題になっているジャッキー・チェンの近影(微博より)
《ジャッキー・チェンの現在》今年70歳になる大スターの近影に中華圏で驚きの声あがる「ちょっと急に老けすぎでは」
NEWSポストセブン