「0対0の試合をいかに飽きさせないように聞かせるかが勝負だった」と語る

「10対0の試合をいかに飽きさせないように聞かせるかが勝負だった」と語っていた(撮影・山崎力夫)

日頃、取材したネタを使えるチャンス

「ピッチャーのローテーションと同じで、3連戦を3人のアナウンサーでのローテーションを決める。僕が頭を中継することになると、あとの試合は別のアナウンサーに、といった具合に決まっていく。この3連戦の頭は重要で、そこで聴取率が良ければ、翌日も聞いてくれると期待できる。シーズンを通じて聴取率を取れば、来年のスポンサーへのセールスに有利に働く。

 だから、3連戦の頭を担当する時は、TBSの渡辺謙太郎さん(2006年に死去)と勝負でしたね。あとラジオ関東(現・ラジオ日本)に島碩弥さん(2004年に死去)がいましたが、ラジオ関東は出力が小さかったので、事実上は僕と渡辺さんの一騎打ちだったと思います。TBSは渡辺さんを2戦目に回したりして、お互いにけん制する。野球と同じでしたね。実況しない日はベンチ情報を担当しました。ピッチャーのローテーションより過酷だった(笑)。総力戦でしたね。それぐらい巨人戦はドル箱カードだったわけです」
 
 当時は19時プレーボール。16時には球場で取材が始まる。ロードの場合は昼間の宿舎でネタを拾うという。
 
「ただ、放送はプレーを追うので、取材してもあまり披露できないんですね。こんなに取材してきましたといっても、デスクに“もっとストライクかボールの判断をしっかりしろ”と叱られました(苦笑)。だから10対0とかになると嬉しくて仕方がなかった。日頃取材したネタが使えますからね。10対0の試合をいかに飽きさせないように聞かせるかが勝負でした。巨人ファンは勝っている時は鼻歌混じりに聞いているが、大きく負けている時はラジオを切ってしまいますからね。それをいかに切らせないようにするか、努力をする。投手戦は投手戦で、関根潤三(元近鉄・巨人、大洋・ヤクルト監督。2020年に死去)という優れた解説者がいたので、見えない心理まで話してくれる。それは面白かった。

 もちろん相手チームの取材もするし、他球団の選手とも親しくなった。でも、放送をやると巨人寄りの放送になってしまう。巨人が点を取ると声が弾むんですよね。昔の後楽園は内野2階席の下にゴンドラがぶら下がっていましたが、その下を阪神ファンが通ると“深澤~っ、なんで巨人ばっかり応援するんだ!”とヤジられました」
 
 昭和のプロ野球を知る男がまたひとり亡くなった。ご冥福をお祈りします。

◆取材・文/鵜飼克郎(ジャーナリスト、『「巨人V9」──50年目の真実』著者)

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