3密を発生させやすいカラオケだが……(イメージ)
ところが、店の客だけでなく経営者までもが「高齢者はワクチンを打っているから安心」の一点張りで、昼カラオケも飲酒も、店の外での喫煙も、やめる様子はなかったという。
「おじいちゃんおばあちゃんだけズルい、と子供たちも思っているのでしょうが、ワクチンを打てない年齢なのが悪い、大人のほうが子供よりえらい、と感じてしまっている児童もいます。地元の方には、大人としてぜひ児童のお手本になるような姿を見せて欲しいと思うのですが、そうした高齢者の方を見ていれば、先生たちが言っていることの方がおかしいのでは?と考え始めないか、不安で仕方ありません」(細井さん)
ワクチンに関する誤情報に基づき、公園やカラオケに戻りつつある高齢者たち。山梨県内の温泉旅館経営の男性(60代)も、筆者の電話取材に対し「秋頃から、老人会などの予約が入り始めている」と話すが、電話口では「全員ワクチン2回接種済」と自信満々に説明されるのだという。また、そうした高齢者が旅館を利用する際、マスクをしない、大広間で密になり会話するなどのトラブルが相次いでいるが、相手はこの時期にはありがたい「お客様」であり、やはり強く指摘は出来ないと声を潜める。
「ワクチンさえ打っていれば安心」という誤情報は、それを信じ込んでしまっている高齢者自身に危険を及ぼすだけでなく、周囲にも大きな悪影響を与える。ワクチンを打ちたくても打てないという若年~中年層は、ワクチンを打ったと大いばりの高齢者たちから、排除されたり、ひどい言葉を投げかけられ、絶望したり、高齢者に恨めしい目を向け始めている。
大人たちの行動を、大人が考える以上に子供たちはよく観察している。自身だけが楽しければ良い、自身だけが助かれば良いという身勝手すぎる行動を取る大人が増えれば、そうした行動を「是」と考える子供、若者も当然増加するはずだ。
すでに、国民の約半数がワクチンを2回接種済みだと政府は公表した。今後、ワクチン未接種の国民がマイノリティになっていく可能性も高いが、そのとき、事情があってどうしてもワクチンが接種できない人、接種の予約が取れなかったという少数の弱い立場の人たちが、接種済みの人々から攻撃される、という恐れも捨てきれない。
今こそ、大人たちが襟を正さないと、コロナが収束しようと、大きな禍根を残すことになる。