春の桜、秋の紅葉・・・四季折々の家族写真を撮影していた。(松永さん提供)

春の桜、秋の紅葉・・・四季折々の家族写真を撮影していた。(松永さん提供)

 真菜さんと莉子ちゃんの写真を公開するのも、迷いはあったという。真菜さんは控えめで恥ずかしがり屋だったから。それでも、真菜さんと莉子ちゃんが生きていた時の写真を見て多くの人が交通事故の現実を感じてほしい、そして巡り巡って事故がひとつでも防げたら、という思いから公開することにした。

 実際、真菜さんと莉子ちゃんとの幸せそうな家族写真を拝見していると、まるで自分の友達や知り合いのような身近で親しい気持ちがわいてくる。そして、このリアルな笑顔の日々が続くはずだったのにどうして・・・・・・と他人事とは思えない感情が押し寄せる。さらに、被害者、加害者、遺族のどれにもなりたくない、なってはいけないと自分の身に置き換えて考えられる。

「たくさんの人に見られることになってごめんね。でも、2人の命を無駄にしないように生きたよ」と松永さんは、真菜さんと莉子ちゃんにいつか胸を張って会えるように生きたいという。

恥ずかしがり屋だった真菜さんのことを思うと、真菜さんと莉子ちゃんの写真を公開することを迷ったという松永さん。それでも、写真を見ることによって、多くの人が現実を身近なものとして感じ、めぐりめぐって交通事故がひとつでもなくなれば、という思いで公開した。(松永さん提供)

恥ずかしがり屋だった真菜さんのことを思うと、真菜さんと莉子ちゃんの写真を公開することを迷ったという松永さん。それでも、写真を見ることによって、多くの人が現実を身近なものとして感じ、めぐりめぐって交通事故がひとつでもなくなれば、という思いで公開した。(松永さん提供)

 1時間以上に及んだ冒頭の「最後の会見」。松永さんが、飯塚被告や裁判についてよりも多く時間をとって発言したのが、交通事故をなくしていくための想いだった。

「加害者を必要以上に誹謗中傷し続けることや、上級国⺠だとか、逮捕されなかったことですとか、それらは本質的に大事なことではないと私は思います。

 交通事故は年間30万件以上起き、年間3000人近い死亡者が出ています。 私が皆様と一緒に考えていきたいのは、どうすればこういう交通事故が防げるのかという未来のことです。なぜなら、交通社会で生きる以上、誰しもが真菜と莉子のようになり得るし、私たちのような遺族にもなり得るし、加害者にもなり得るからです。

 私は皆様にそんな思いをしてほしくないから、皆様と一緒にひとつでも交通事故をなくしていきたいです。皆様の当たり前の日常が、交通事故によって奪われないようにしたい。それが真菜と莉子の命を無駄にしないということなのだと私は思っています。

 事故から2年5か月、交通事故撲滅のため、『一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会』の仲間と共に、交通事故撲滅を目指し活動してきました。裁判が終わり、今後はよりその活動を積極的にしていきます。国や自治体、メーカーへの提言などを続けていきます。ぜひ、そちらの活動にもご興味を持っていただければうれしいです」(松永さん)

 かねてから、「裁判には終わりはあっても、交通事故をなくす活動には終わりはありません」と言い続けていたように、裁判は大事だけれどひとつの区切りがついての新たな決意表明に思えた。

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