会見の報道陣との質疑応答ではこんな場面もあった。
「高齢の家族を心配する子、あるいは高齢のドライバーを心配する声に、改めて松永さんからこういう言葉を届けたいことがあればお伝えください」という小学生新聞の記者からの質問に、松永さんは一度回答したあと、会見の終盤でもう一度言葉を添えた。
「すいません、さっきの質問にちゃんと答えられていなかったなあと思ったので、どうしてもちょっと心残りなので、もう一度改めてお答えさせてください」
そして、改めてこう答えた。
「高齢者でも若い人でも事故を起こす可能性はあります。歩行者でも巻き込まれることがある。どうすればお互いの命を守れるかなという話し合いをしてほしいなと思っています。そうした中で『お父さんが運転する時ってどんなことに気をつけているの?』『運転席からはどう見えるの?』といった話をし合うことで、それが子どもの学びになると思います。
そういう話を聞けば、子どもも『見通しの悪い交差点は気をつけよう』といった具体的な、命を守る話に繋げてくれたらなと思います」
他の質問に対してきちんと受け答えしながらも、気がかりなことはうやむやにしない。未来を作る子どもたちにもわかる言葉できちんと伝えたいという、真摯な姿勢が垣間見えた。
松永さんが副代表理事を務める「一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会」では、学生向けの交通犯罪被害者遺族対談イベント「天羽プロジェクト」や交通事故の遺族からの生の声を伝える「命の里プロジェクト」なども開催している。
冒頭の会見に戻る。
「上原さんも松永さんもすごくやさしくていい人なんですよね。愛情深くて、あまり人のことを怒ったり攻撃したりしない。本来のおふたりに少しずつ戻って、いろんな活動はされると思いますが、穏やかな気持ちで日常を少しずつ取り戻してくれたらなあという気持ちでいっぱいです」
被害者側の弁護団で、松永さんや真菜さんの父親・上原義教さんと2年以上関わってきた代理人弁護士の上谷さくらさんは、裁判中だったこれまでよりもやわらいだ表情でこう話した。
「争ったりしない、真菜と莉子が愛してくれた穏やかな自分に戻りたい」と言っていた松永さん。真菜さんと莉子ちゃんもきっと、ご主人をお父さんを誇らしく思い、松永さんがこれから進んでいく道を応援してくれることだろう。